「多くの人が支えているよ」養護施設卒園の若者に家電 新生活を応援 長崎はばたき支援会

赤岩施設長(右)と六倉さん(中央)に本年度の活動予定を説明する豊田さん=長崎市南山手町、マリア園

 進学や就職で長崎県内でも多くの若者が新生活をスタートさせた4月。長崎市のNPO法人長崎はばたき支援会(山口憲男会長、39人)は、県内11の児童養護施設を卒園し、1人暮らしを始める人に電化製品を贈る活動をしており、この春も17人の新生活を応援した。「多くの人があなたたちを支えようとしているんだよ」。その思いを込めて。
 「洗濯機が届いたと連絡がありました」。9日、同市の児童養護施設マリア園。職員の六倉実紀さん(36)が、同法人で事務局を務める豊田菜々子さん(35)にお礼を述べた。
 赤岩保博施設長(73)も「ここで暮らす子たちは一般家庭の子に比べ、社会に出て独り立ちする時に支えてくれる人が少ない。手持ちの資金も限られるので支援は子どもたちにとってより良いスタートを切る起点になる」と感謝する。
 同法人では会員らの寄付金を基に、洗濯機や冷蔵庫など5種類の家電の中から1人1種類1台まで本人の希望に沿って購入。法人設立翌年の2017年度から23年度までに計127人を支援した。必要に応じアパートを借りる際の連帯保証も請け負い、これまで3人の保証人となった。中高生を対象に交流会も開く。
 もともと市内で飲食店を経営していた会長の山口さん(55)が経済団体の活動を通じ、施設関係者から「困っているのは卒園する子の独り立ち支援」と聞いたのがきっかけだった。今は愛知県内で物流会社を経営する山口さんは「できることは限られるが、独り立ちを応援したい」と語る。

 児童養護施設や里親家庭などで暮らす「社会的養護」の対象は原則18歳まで。国も独り立ちの際に経済的な援助をしているが、保護を離れた「ケアリーバー」は公的な援助が途切れ、頼る相手がおらず、困窮や孤立に陥りやすいとされる。国は今月1日施行の改正児童福祉法で年齢制限を撤廃するなど、自立支援に力を入れる。
 マリア園でも23年度から自立支援担当を配置。六倉さんが進学や就職の相談に乗り、奨学金の申請手続きのサポートや卒園後のアフターケアに当たる。園が近くにアパートを借り、卒園を控える若者が最長1週間、1人暮らしを体験する取り組みも始めた。
 「感謝を忘れず、自分は1人じゃない、社会全体が支えてくれていると分かってもらうため、いろいろな人と出会い、体験することは大事」。赤岩施設長は行政だけでなく、社会の支えが子どもたちの明るい未来につながると信じている。

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