大企業支える 若きエンジニア 長崎県内大学卒業・地元採用 在宅研修システム開発

ビーモンの画面を通して同僚たちとやりとりする舩津さん=長崎市、ビーウィズ長崎センター

 県誘致企業のビーウィズ(東京)は、コンタクトセンター(顧客窓口)の在宅オペレーター育成に有効なオンライン研修システムを大企業に提供している。本社にいる講師が大勢の受講生の表情や操作画面を見ながら、やりとりできるなど業界初の機能を備える。開発したのは、県内大学を卒業し地元採用された若いエンジニアたちだ。

 同社はBPO(業務委託)やコンタクトセンターを全国17拠点で展開する東証プライム上場企業。本県では、2006年に長崎市万才町に開設した「長崎センター」で保険会社や家電メーカーの業務を代行している。さらに22年、本社に続くデジタル開発拠点として「デジタルラボ長崎」を併設した。
 ラボ勤務11人のうち8人は県内大学出身の新卒者。地元IT企業ドゥアイネット(同市)の技術指導を受けながら、映像と音声をリアルタイムで共有するシステムを開発した。その実用策を探る中で、コンタクトセンターの現場から、ある課題が寄せられた。
 折しも新型コロナウイルス禍で、多くの企業が労働集約型のコンタクトセンターに在宅勤務を取り入れ、普及した。だがオペレーター同士のコミュニケーションを取るのが難しく、特にオンライン研修は、講師が在宅オペレーターの操作画面を見ることができないなど制約が多い。
 ラボで開発したシステムを活用すれば、講師は、在宅オペレーターの操作画面やカメラ映像の表情を見て常時モニタリングが可能。同時に最大100人とつながり、複数の画面を共有できる。在宅オペレーターが接客で困った場合、現場責任者に指示や支援を求める「エスカレーション機能」もあり、その際はマンツーマンの通話に切り替える。こうした機能はコンタクトセンター業界になかったという。
 人材確保や働き方改革、災害時の事業継続計画、コスト削減-といった在宅勤務のニーズ拡大にも対応できるとして、システムを「Be-mon(ビーモン)」と名付け昨年4月にリリース。社外への販売も始め、大手のゲーム会社や保険会社などに納入した。

 「思い通りにアプリをつくれたら楽しいはず。けれど人が多い都会は苦手」。長崎総合科学大でプログラミングを学んだ舩津裕志さん(26)はそう考え、生まれ育った地元で就職先を探し、20年に入社した。コンタクトセンターへのシステム導入サポートやメンテナンスをこなしながら、開発を続ける。新卒の同僚7人も同大、長崎大、県立大から集まった。チームリーダーの舩津さんは「ITで『もうけたい』より『自分の技術を高め成長したい』という思いが強い」と職場の意識を明かす。
 ほかの3人は外国人の中途採用。次世代ICT大国とされるパキスタン出身の派遣エンジニアらと、舩津さんらは翻訳ソフトや片言の英語でコミュニケーションを取っている。そもそも参考にするエンジニアリングの文献は英語版が多い。実戦で語学力を身に着け、これから共同開発にも踏み込む。
 長崎の若いエンジニアたちが東京の大企業を支えている。

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