家庭復帰前に親子交流機会 三重県が児童虐待の再発防止策、女児暴行死受け

【児童虐待の再発防止策を確認する県幹部ら=県庁で】

 津市で母親から暴行を受けた女児=当時(4つ)=が死亡した事件を受け、三重県は10日、児童虐待の再発防止策をまとめた。関係機関の役割分担を徹底することや、乳児院からの家庭復帰を前に親子が交流する機会を設けることなどを明記。一見勝之知事は児童虐待の根絶に向け、関係条例の改正を検討する意向を示した。

 県によると、再発防止策は、事件の検証委員会(佐々木光明委員長、5人)が先月29日にまとめた報告書を踏まえて策定。関係部局の幹部で構成する児童虐待防止対応検討会議で決定した。

 児童相談所の人員増や対面での安全確認など、事件を受けて既に始めた対策に加え、保育士を対象とした虐待に関する研修の実施や、児相職員に関する人材育成計画の策定なども明記した。

 また、女児と母親が1年9カ月以上にわたって交流する機会がなかったとする検証委の指摘を受け、乳児院からの家庭復帰を予定する児童と親が月に1回以上のペースで交流する機会を設ける。

 このほか、女児が乳児院を退所して以降、津市に支援を引き継がなかった反省から、関係機関でつくる要保護児童対策地域協議会を通じて退所前の引き継ぎを徹底することも明記した。

 改正を検討するのは、平成16年に議員提案で制定した「子どもを虐待から守る条例」。児童虐待の根絶に向けた県や市町の責務を定めている。これまでに3回にわたって改正された。

 県は児童の安全確認や関係機関との連携などに関する詳細な記述を条例に盛り込むことを想定。一時保護の判断などに活用するAI(人工知能)について明文化することも検討する。

 一見知事は会議で「なるべく早いタイミングで(再発防止策を)始めてほしい。なぜ女児の命が失われたのかを考え、体制づくりや関係機関との連携、人材育成に努めてほしい」と述べた。

 同条例について「見直すべきところがあるのではないか。コロナ禍では対面での安全確認ができていなかったが、今の条例で十分なのか」などと述べ、改正を検討するよう指示した。

 会議後の定例記者会見では、条例改正の意義について「(虐待防止の取り組みを)より広く、より深く規定することが重要」と説明。外部有識者の意見を聞いて改正を検討する考えを示した。

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