マスターたちのスイング診断 VOL.5 ルドビグ・オーベリ【解説/目澤秀憲】

シェフラー、マキロイ、松山、ラーム、ケプカ…マスターたちによる祭典がいよいよ始まる。オーガスタを攻略してグリーンジャケットに袖を通すのは誰か。マスターズ優勝をサポートした経験を持つ目澤秀憲コーチが、優勝候補たちの最新スイングを分析・解説する。5回目は、スウェーデンのルドビグ・オーベリ。

「特徴がない」ことが一番の特徴

オーベリのスイングの一番いいところは、「いい意味で特徴がない」ということ。ダスティン・ジョンソンみたいにインパクトでスピンアウト(腰を引く動き)したり、マキロイみたいにトップでクロスしたり、インパクト後に無理に跳ねてスピードを上げたりというのもない。つまり体のどこかを過剰に使ってパワーを捻り出すということがなく、すべてがニュートラルな状態で振っているんです。ドライバーもどこかアプローチっぽくて、強振しないでフェアウェイに運んでいる。まさに試合で戦える球ですよね。

大きなスイングアーク。胸とクラブの距離感がずっと変わらない(撮影/服部謙二郎)

アドレスはいたってシンプル、キレイに立っています。トップは少しレイドオフ気味。インパクトでは胸で上手くカバーしてフェードを打っていますが、状況によって体の向きを替えてドローも打ちます。そうした弾道の打ち分けも、本人はいたってシンプルにやっているように見えます。

目を見張るのは、切り返し以降の体の使い方です。そこまでクラブをタメる様子もなく、クラブが体に近づいていかない。イメージするならグリップエンドと胸にゴムチューブがついていて、それをずっと引っ張ったまま打っている感じ。胸とクラブが遠い位置関係のままで、プレッシャーのかかった状況でもそれができている。大きなスイングアークを保ったまま胸とクラブが遠い関係を保つのは、体にけっこう負荷がかかると思いますが、それを常時やり続けられる体の強さも合わせ持っています。

大学在籍時から「すごい選手がいるな」と注目していましたが、その頃から完成度は高かった。プロに入ってすぐ活躍すると思っていましたが、昨年はライダーカップで活躍するなど想像を超えたスピードで成長しています。コーチ目線で言わせてもらうと、「どうやったらここまでの選手を作り上げられるのか」が気になる。スウェーデン出身、冬場はゴルフができず、インドアの施設でスイングを作ってきたと聞きます。ギアーズ(スイング解析器)などの最新機器も使って現代スイングの知識も入れていますし、大学からアメリカに渡りタフなコースで戦って順調に成長してきました。若手の中の一番の有望株なのは間違いなく、マスターズも含めてことしメジャーをとる可能性は十分にあると思います。(取材・構成/服部謙二郎)

© 株式会社ゴルフダイジェスト・オンライン