豪華すぎるにもほどがある! 1986年に日本を騒がせた洋画たち

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人気ドラマの舞台ともなり関心が高まる「1986年」。今も多くの映画ファンを魅了する名作が日本を沸かした一年でした。話題を呼んだ洋画から人気スターまでプレイバック!(文・田中雄二/デジタル編集・スクリーン編集部)
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1986年配給収入ランキング(洋画)※

1位:バック・トゥ・ザ・フューチャー(36.5億円)
2位:ロッキー4/炎の友情(29.5億円)
3位:グーニーズ(19.5億円)
4位:コブラ(18億円)
5位:コーラスライン(14億円)
6位:エイリアン2(12億円)
7位:愛と哀しみの果て(11.5億円)
8位:ポリス・ストーリー/香港国際警察(10.3億円)
9位:コマンドー(10億円)
10位:サンタクロース(10億円)

※出典:過去配給収入上位作品(配給収入10億円以上番組)一般社団法人日本映画製作者連盟

1986年度(第36回)SCREEN映画大賞ランキング〈作品部門〉

1位:トップガン
2位:エイリアン2
3位:愛と哀しみの果て
4位:ロッキー4/炎の友情
5位:セント・エルモス・ファイアー
6位:カラーパープル
7位:カイロの紫のバラ
8位:ハスラー2
9位:サンダーアーム/龍兄虎弟
10位:イヤー・オブ・ザ・ドラゴン

1986年の正月を賑わせたのは『BTTF』ほか前年末公開作!

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1986(昭和61)年は、バブル時代の真っただ中。そんな世相を反映してか、日本で公開された洋画もバラエティーに富み、活気に満ちたものが多かった。ここではこの年の年間配給収入とSCREEN映画大賞の結果を踏まえながら、公開映画について振り返ってみたい。

まず、1985年の年末に公開され、1986年の正月映画となったのは、スティーヴン・スピルバーグが設立したアンブリン・エンターテインメント製作の痛快タイムトラベル映画 『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(配収1位)、同じくアンブリン製作の『グーニーズ』(配収3位)、SFファンタジーの『コクーン』『サンタクロース』(配収10位)、ミュージカル『コーラスライン』(配収5位)、ジャッキー・チェン主演の『ポリス・ストーリー/香港国際警察』(配収8位)といったラインアップ(以上すべて1985年公開)。

『グーニーズ』U-NEXTで配信中 © Warner Bros. Entertainment Inc.
『コーラスライン』Photo by Getty Images
『ポリス・ストーリー/香港国際警察』U-NEXTで配信中 ©2010 Fortune Star Media Limited. All Rights Reserved.

これらの映画は総じてヒットし、結果的には何と、この年の年間興行収入ベストテンの半数を占めることになる。ちなみに、1986年と現代を舞台にした現在放送中のテレビドラマ「不適切にもほどがある!」は『バック・トゥ・ザ・フューチャー』から多大な影響を受けている。

『グーニーズ』U-NEXTで配信中 © Warner Bros. Entertainment Inc.
『ポリス・ストーリー/香港国際警察』U-NEXTで配信中 ©2010 Fortune Star Media Limited. All Rights Reserved.

『セント・エルモス・ファイアー』『ロッキー4』『コマンドー』!

フレディ&キョンシーもこの年日本へ!

『 セント・エ ルモス・ファイアー』Photo by Getty Images
『コマンドー』Photo by Getty Images

さて、1986年上半期の公開作では、エミリオ・エステヴェス、ロブ・ロウ、デミ・ムーアらが共演した青春群像劇 『セント・エルモス・ファイアー』(2月/SCREEN映画大賞5位)、アーノルド・シュワルツェネッガー主演のバイオレンスアクション 『コマンドー』(2月/配収9位)、チャイニーズマフィアの若きボスと一匹狼の刑事の戦いを描いた『イヤー・オブ・ザ・ドラゴン』(2月/SCREEN映画大賞10位)、20世紀初頭のアフリカを舞台に、愛と冒険に生きた一人の女性の半生を描き、アカデミー賞で作品賞、監督賞ほか7部門で受賞した『愛と哀しみの果て』(3月公開/配収7位、SCREEN映画大賞3位)などが目立った。

『愛と哀しみの果て』Photo by Getty Images

その他の作品では、当時の米ソ関係を背景にしたシルヴェスター・スタローン主演のボクシング映画『ロッキー4/炎の友情』(6月/配収2位、SCREEN映画大賞4位)、ジム・ジャームッシュ監督が3人組の若者の日常をオフビートなタッチで綴った 『ストレンジャー・ザン・パラダイス』(4月)、ウディ・アレン監督の映画愛に満ちたファンタジックなラブストーリー『カイロの紫のバラ』(4月/SCREEN映画大賞7位)なども印象に残る。

『ロッキー4/炎の友情』Photo by Getty Images

そして、『エルム街の悪夢』(5月)と『霊幻道士』(4月)からフレディとキョンシーという有名キャラクターが生まれ、『バタリアン』(2月)は「オバタリアン」という流行語を生むきっかけを作るなど、ユニークなホラー映画も注目された。

また、この年の3月に行われたアカデミー賞の授賞式では、黒澤明監督の日仏合作映画『乱』でワダエミが衣装デザイン賞を受賞し、黒澤監督自身も、ジョン・ヒューストン、ビリー・ワイルダーと共にプレゼンターを務めたことも大きな話題となった。

スタローン、ジャッキー、エイリアン! 1986年下半期は人気アクション連発

『コブラ』Photo by Getty Images

1986年下半期公開の映画では、シルヴェスター・スタローン主演の刑事アクション『コブラ』(8月/配収4位)、ジャッキー・チェン演じる冒険家の活躍を描いた『サンダーアーム/龍兄虎弟』(8月/SCREEN映画大賞9位)、“今度は戦争だ!”というキャッチコピーの下、無数に繁殖したエイリアンと兵士との戦いを描いた、シガニー・ウィーヴァー主演、ジェームズ・キャメロン監督の 『エイリアン2』(8月/配収6位、SCREEN映画大賞2位)が目立った。

『エイリアン2』Photo by Getty Images

アンブリン作品が躍進した一年! アート&ミニシアター系作品も話題に

また、スピルバーグ監督が、一人の黒人女性の自立を描いた『カラーパープル』(9月/SCREEN映画大賞6位)は、アカデミー賞で11部門にノミネートされながら無冠に終わり物議を醸したが、彼が設立したアンブリン・エンターテインメントの躍進には目を見張るものがあった。

前年末に公開された『バック・トゥ・ザ・フューチャー』と『グーニーズ』も含めて、1986年には同社製作の『ファンダンゴ』(3月)『ヤング・シャーロック ピラミッドの謎』(3月)『カラーパープル』『マネー・ピット』(12月)が公開されたのだ。その後もアンブリンは精力的に映画製作を続け、2024年にはミュージカル化された『カラーパープル』が公開された。

『カラーパープル』Photo by Getty Images

一方、いわゆるアート系、ミニシアター系映画の台頭も顕著だった。この方面では、南米某国の刑務所を舞台に、政治犯と同性愛者の交流を描き、同性愛者役のウィリアム・ハートがアカデミー賞の主演男優賞を受賞した 『蜘蛛女のキス』(7月)、さまざまな悲劇を乗り越えていく一家の姿を描いた、ジョン・アーヴィング原作、ジョディ・フォスター主演の 『ホテル・ニューハンプシャー』(7月)、ジャズミュージシャンとファンの友情を描いた『ラウンド・ミッドナイト』(10月)、情報管理された近未来社会の恐怖を描いたテリー・ギリアム監督のカルト映画『未来世紀ブラジル』(10月)などがある。

1986年の締めくくりにトム・クルーズがテイク・オフ!

ところで、1980年代のハリウッドの青春映画に出演した若手俳優たちは、総称して「ブラット・パック」(日本ではYA(ヤングアダルト)スター)と呼ばれたが、その中の一人モリー・リングウォルドの代表作でジョン・ヒューズが監督した『ブレックファスト・クラブ』(5月)と『プリティ・イン・ピンク/恋人たちの街角』(11月)も1986年に公開された。

『プリティ・イン・ピンク/恋人たちの街角』Photo by Getty Images

そして、1986年を締めくくったのが、今も現役バリバリのトム・クルーズ。『ハスラー2』(12月/SCREEN映画大賞8位)では、若きビリヤードプレーヤー役でポール・ニューマンと共演。ニューマンは、クルーズの助演もあって『ハスラー』(1961)から25年ぶりの続編となったこの映画で、翌年のアカデミー賞で念願の主演男優賞を受賞した。

もう一本は、艦上戦闘機F-14のパイロット、ピート・ミッチェル(コールサイン:マーヴェリック)を演じた、言わずもがなの『トップガン』(12月)。年末公開にも関わらず1986年のSCREEN映画大賞では1位に輝いている。

『ハスラー2』のニューマン同様、36年後にクルーズ主演の続編『トップガン マーヴェリック』(2022)が製作されたことは、彼がいかに息の長いスターであるかの証明でもある。

『トップガン』Photo by Getty Images

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