支援 続くとは限らない 国境離島新法の期限3年切る <地方からの課題 衆院長崎3区補選・上>

水揚げしたマグロの出荷作業に追われる漁業者。国境離島新法による輸送支援の継続や拡充を求める声がある=五島漁協富江支所

 衆院補欠選挙が今月行われる長崎3区は、多くの離島や大村市などで構成され、抱える課題も多様だ。中でも、離島であれば、基幹産業の1次産業振興や本土とつなぐ定期航路維持、同市なら、本県の玄関口でもある長崎空港の活性化-。こうした国の支援が欠かせない地方の実情を報告する。

 6日午後4時、五島市富江町の五島漁協富江支所の作業場。一本釣り漁を終えた各船から、高級魚アカムツや2キロ超サイズのマグロが次々と水揚げされ、組合員らが「本土向け出荷」の箱詰め作業に追われていた。「五島産は市場評価が高い。国境離島新法の輸送支援のおかげで、コストを意識せず出荷できるようになった」と草野正組合長は話す。
 離島の基幹産業を支える漁業者にとって一番の悩みは、遠く離れた本土への輸送費だ。価格競争上どうしてもネックとなる。だが2017年度に同法が施行。その輸送コスト支援制度で、加工品を除く農水産品の出荷や原材料の輸送の費用に対し、最大8割(国6割、県と市町各1割)が補助される。草野氏によると、以前なら出荷しても赤字だった安値の魚も含め、扱う魚種が増えた。
 ただ、補助範囲は本土までの1次輸送費に限られ、経由地の長崎市からの陸送は対象外となっている。「大消費地まで輸送支援の範囲が広がれば、市場を分散して値崩れも防げる」と草野氏。九州各県から鮮魚が集まる福岡魚市場(福岡市)では壱岐、対馬、五島、平戸産の取扱高が上位を占めるが、このところ五島漁協分が2~3割減っている。燃油高などを背景に、漁業者が出荷をためらう傾向があるという。同市場の黒石一正営業第2部長は「五島産は需要が高い。できれば、もっと取り扱いたい」と惜しむ。
 県によると、同法の輸送支援制度を17年度に活用した県内農水事業者数は99だったが、22年度は146と年々増加した。五島市の水産業に絞って見ても、支援額は年平均2億5千万円前後で推移し、市は「ニーズが高く、本土との格差解消に一定つながっている」と評価する。
 それでも草野氏は「支援は手厚いが、この先は…」と顔を曇らせる。同法は10年間の時限立法で、27年3月末に期限を迎える。地元出身衆院議員として法成立に尽力した谷川弥一氏は7期目途中、自民党派閥裏金問題で国政を去った。
 「国の予算は削減傾向にあり、このまま支援が続くとは限らない」。政権与党や官庁に陳情を重ねた草野氏は後ろ盾を失った今、危機感を隠さない。「期限延長や支援項目の追加につなげる大切な時期。一体、誰に託せばいいのか」と不安を募らせている。
=連載・中へ続く=

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