バイオスティミュラント市場に関する調査を実施(2024年)~みどりの食料システムなどで注目を集めるバイオスティミュラント市場、2030年度の市場規模は136億1,000万円までの拡大を予測~

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、国内におけるバイオスティミュラントを調査し、市場規模、参入企業の動向、および将来展望を明らかにした。

1.市場概況

国内では農業従事者数、農業経営体数が減少する中、農業経営体の大規模化が進んでいる(データ出所:農林水産省)。また、国内外では平均気温の上昇などの気候変動が起きており、農業への影響も懸念されている。

農林水産省は持続可能な農林水産業を目指し、2021年に食料・農林水産業の生産力向上と持続性の両立を新技術の活用で実現することを目的とした「みどりの食料システム戦略」を策定した。

このような中で、高温や乾燥などの厳しい生育環境下においても、収穫量増加や品質向上を行うことを可能にするバイオスティミュラントが注目を集めている。現在、日本国内において明確な定義は定められていないものの、世界各国においては定義化等の動きがあるなど、バイオスティミュラントは全世界的にも重要な製品群となっている。

バイオスティミュラント製品の2022年度の国内市場規模(5分類合計)は、メーカー出荷金額ベース(国内流通分)で92億2,000万円と推計した。

2.注目トピック~「みどりの食料システム戦略」における化学農薬・化学肥料削減の動き

農林水産省の「みどりの食料システム戦略」では、持続可能な農林水産業を目指しており、化学農薬や化学肥料の使用量削減について、2050年までに化学農薬使用量のリスク換算での50%低減※1、化学肥料の使用量の30%低減などの目標を掲げている。

化学農薬の使用量低減については、植物の生育促進、厳しい環境や病害に対する植物の免疫力の向上を目指す技術として、バイオスティミュラントの技術開発、普及が想定されるが、これに加え、総合的病害虫雑草管理※2の普及や病害抵抗性育種などの取り組みが期待されている。また、化学肥料の使用量低減では、土壌微生物の機能を解明し、微生物の働きによる肥料成分を有効活用した栽培方法の確立などを目指している。これらの新技術の活用により、2050年における各目標の達成に向けた動きが進展する。

※1. リスク換算での50%低減とは、これまでの減農薬のような散布回数の減少による使用量削減とは異なり、農薬の環境への影響を検証可能な形(リスク換算)で算出し、その総量を50%低減することをさす。
※2. 総合的病害虫雑草管理とは、既存の化学農薬の使用だけでなく、栽培環境の整備などにより、病害虫や雑草の発生を抑制する管理方法をさす。

3.将来展望

国内におけるバイオスティミュラント市場は今後も拡大し続け、2024年度はメーカー出荷金額ベース(国内流通分)で99億2,000万円、2030年度は136億1,000万円に達すると予測する。

この背景には、肥料価格の高騰による肥料代替や「みどりの食料システム戦略」において化学農薬や化学肥料の使用量削減が掲げられていること、さらに、バイオスティミュラント製品を現在使用している生産者はそれほど多くなく、今後の生産者の需要拡大の余地が大きいことなどから、今後も市場は拡大傾向にあるとみる。

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