未来見据え「証言の航海」へ 被爆者の小川さん、孫の長門さん 13日から3カ月間ピースボート乗船

ピースボートに乗船する小川さん(右)と孫の百音さん=長崎新聞社

 被爆者とともに世界を巡り核兵器廃絶を訴える非政府組織(NGO)ピースボートの「証言の航海」に、長崎で被爆した小川忠義さん(80)と孫の長門百音さん(21)=いずれも長崎市=が参加する。航海は今月13日から3カ月間。それぞれに継承の手がかりを求め世界約20カ国を回り、平和への思いを伝える。

 小川さんは1歳の時、疎開先から爆心地近くの自宅に戻り入市被爆した。2009年、趣味の写真を生かし「忘れないプロジェクト」を始動。毎年8月9日午前11時2分に撮影された写真を集め、展覧会を開いている。
 12年、「証言の航海」に参加した。被爆者が家族にも語らなかった壮絶な体験を伝える姿を見て証言活動の大切さを肌で感じた。小川さんも戦後の貧しい暮らしや、被爆の影響とみられる病気で家族を亡くした経験を初めて語った。「世界の人は核の恐ろしさを知らない。被爆者がまだまだ続けないといけない」。自身が始めたプロジェクトの意義を再認識した。
 旅の経験は活動の原点となった。帰国後、プロジェクトに精力的に取り組み、当初30枚前後だった写真は21年以降、年200枚を超えるように。昨年は国内外から251枚が集まった。
 昨年12月、ぼうこうがんの手術のため入院した病床で、ピースボートから参加の打診を受けた。ちょうど活動のモチベーションが下がり悩んでいた時。すぐに意思が固まり「勉強になるのでは」と百音さんも誘った。
 百音さんは22年から本格的にプロジェクトへの協力を始め、インスタグラムを開設した。「若者に届けるにはSNSしかない」と始めたが、写真の集まりは伸び悩んだ。友人に頼むが「自分から参加してほしい」という理想と合致せず、良い策も浮かばない現状に陥っていた。
 小川さんからたびたび聞いてきた「航海」への参加。誘われた時は小川さんの体調の不安や自身の学業など不安もあったが、参加したい気持ちが勝った。「いろんな人に積極的に意見を聞いてヒントを見つけたい」と意気込む。
 2人には被爆百年に1千枚の写真を集める目標がある。航海はその達成のためにも、大きな経験になると考えている。小川さんは「世界の若者に証言を聞いてもらい、プロジェクトも知ってもらって今後の活動の糧にしたい」、百音さんは「自信をつけて平和に対して自分の意見を持ちたい」と真っすぐ前を見つめ、期待をにじませた。

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