牛の飼料用米栽培に液肥を活用 東北おひさま発電(長井)、資源の地域内循環確立めざす

バイオガス発電で生じた液肥を田んぼに散布する作業員。飼料用米などの栽培に役立て、資源の地域内循環につなげる=飯豊町

 再生可能エネルギー事業を展開する東北おひさま発電(長井市、後藤博信社長)は、飯豊町のバイオガス発電所から出た液肥を、飼料用米などの栽培に活用している。町内で盛んな肉牛肥育で生じた牛ふんから発電し、副産物で育てた飼料を牛に還元する資源の地域内循環を確立させたい考えで、農家の肥料コスト削減にもつながっている。

 2020年に稼働を開始した、同社のながめやまバイオガス発電所の液肥を使用する。米沢牛の約4割を生産する町の特徴を生かし、肉牛の排せつ物と食品残さを発酵させ、発生したメタンガスを燃やして発電。23年度の発電量は約400万キロワット時で、一般家庭約千世帯分に相当する。

 液肥とは、発酵を終えた残留物から固形物を分離した液状の有機肥料。化学肥料より含有率は少ないものの、窒素、リン酸、カリウムの3要素のバランスがよく、即効性・遅効性の窒素分が2対1の割合で含まれている。主に牧草地に散布して活用してきたが、町内農家とバイオマス液肥利用組合(中村仁一組合長)を立ち上げ、23年度から水田への散布に乗り出した。

 初年度は飼料米・飼料稲を中心に、約23ヘクタールに690トンを散布し、おおむね目標の生産量を達成できた。本年度は主食用米への活用を増やし、約40ヘクタールに1282トンを計画する。作業は田起こし前の3月下旬から約1カ月間で実施。同社が購入した散布車が各水田を回り、10アール当たり2.5トンを基準に作業を進めている。

 現在は液肥の有効性や施肥手法の体系化を目指した試験段階。液肥自体は同社が無償で供給し、各農家は施肥費用のみを負担することから、田んぼ全面を液肥に置き換えた場合、化学肥料と比べて施肥コストが3分の1程度に抑えられるという。二瓶俊明業務部長は「肥料価格の高騰に左右されない、持続可能な循環型農業の確立に役立ちたい」としている。

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