ご当地グルメ「ばりそば」知ってる? 台湾の家庭料理参考に山口市で誕生 ばりばり食感が名の由来

春来軒小郡店のばりそば

 山口市のご当地グルメ「ばりそば」。硬めの麺と、魚介類などの具材入りあんスープの組み合わせが絶妙な味わいとなっている。関係者によると、提供する店は市内に現在4店。各店は近隣の人たちの行きつけになっており、週末は観光客でにぎわう。見た目は「皿うどん」に似ているが、違いはあるのか。そもそも、いつごろ誕生した料理なのか。

 硬い太麺のばりばりとした食感が、メニューの名前の由来となっている。その硬麺が、大きな平皿に盛られ、鶏がらだしのしょうゆスープに漬かる。具材は、煮込んだキャベツやタコ、練り物、シイタケなどたっぷり。値段の相場は、並で1皿900~千円となっている。

 「『うずら卵の入っていない皿うどん』と説明する人がいるけど、全然違う。別ものだよ」と春来軒中市店(同市中市町)の山根一弘店長は力を込める。

 皿うどんは一般的に細めの麺を油で揚げ、とろみの強い具材入りあんを上にかける。一方、ばりそばは少量の油で焼くように太い麺を調理する。スープは、とろみが強い皿うどんよりもさらさらとして粘り気はほとんどない。各店は、だしの利いたスープを味わってもらうため、大きなスプーンを添えて出している。

 週1回は食べるという同市小郡明治の酒店店員藤本高志さん(48)は「脂っこくなく、飽きのこない味に魅了されて店に通っている。週末は混雑してなかなか入れないのが悩み」と話す。

 関係者によると、1950年代に台湾の家庭料理を参考に考案され、屋台で売られた「やきそば」が源流という。80年ごろから麺のかみ応えなどで「ばりそば」の呼び名が広がった。春来軒本町店(同市本町)では現在もメニュー名をやきそばとしている。扱う店は2010年代に7店まで増えたが現在は4店。春来軒中市店、本町店のほかは春来軒小郡店(同市小郡新町)と、夜間営業の春来館(同市湯田温泉)で、いずれも店名の最初に「春来」が付く。

 市民の中には「父の好物だったので、テイクアウトして病床に届けた」「大好きだった故人の仏前にささげている」という人もおり、地域に根付いた「ソウルフード」と言ってもよさそうだ。

 県観光連盟が運営する観光サイト「おいでませ山口へ」では「モリモリ、汁だくのご当地麺」、山口観光コンベンション協会の観光サイト「西の京やまぐち」では「市のご当地グルメとして愛されています」と紹介されている。

 春来軒中市、小郡両店を営む会社の社長でもあり、「ばりそば」の商標登録をしている中市店の山根店長は「商標登録はしたが、市民に愛されてきた料理なので『ばりそば』という料理名を誰かが使うことに制限は設けるつもりはない。さまざまな工夫を凝らした店が出てきてほしい」と期待している。

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