東武に聞く「車掌車なし」が実現できた理由とは 「SL大樹」のC11形123号機、「SL+客車のみ」編成で運転開始へ

C11形123号機(画像はATS搭載改造前のもの)

東武鉄道は5日、「SL大樹」などで運転している蒸気機関車、C11形123号機を、「車掌車なし」で運転すると発表しました。

SL大樹は、東武鬼怒川線の下今市~鬼怒川温泉間を走るSL列車。派生列車として、東武日光駅発着の「SL大樹ふたら」も運転されています。この列車は、2017年の運行開始からこれまで、SLと客車の間に、旅客が乗車できない車掌車を連結していました。

車掌車は、本来は貨物列車に連結する車両です。「SL大樹」では、なぜ車掌車を連結していたのでしょうか。東武鉄道によると、「当社線を走るためには保安装置(ATS)の搭載が必須ですが、小型機関車のC11形には搭載が困難」だったということ。そのため、やむなく車掌車に保安装置を搭載する形が採られていたのです。

しかし、東武鉄道では、「SL大樹」の運転開始以降も、SLへの保安装置搭載を検討し続けていたといいます。そして今回、その目途が立ったため、C11形123号機がATSを搭載することで、車掌車なしでの運転が可能となりました。

東武鉄道のATSでは、走行時の正確な速度情報の取得が必要です。そのため、東武鉄道では、C11形の運転室下にある「従台車」の「軸箱」(車輪の先端部を収める部位)を改造。ここに「速度発電機」(自転車のヘッドライト同様、車輪の回転で発電する小型の発電機)を搭載することで、速度情報の取得を可能にしたといいます。

余談ですが、近年のATSの機能向上は他社のSLにも影響を及ぼしているよう。JR東日本のC57形180号機、D51形498号機、C61形20号機では、新型ATS搭載のために、東武鉄道同様に速度発電機を追設。速度計そのものを取り替えています。JR西日本のD51形200号機も同様に、ATS-Pを搭載する際に速度発電機が設置されました。そのほか、JR北海道の「SL冬の湿原号」で活躍するC11形171号機、真岡鉄道の「SLもおか」で走るC12形66号機、大井川鉄道のC10形・C11形・C12形は、いずれも「SL大樹」と同じ小型機。ですが、各車両とも旧型ATSの設置路線しか走らないため、正確な速度情報の取得という課題は発生していないようです。

C11形123号機による車掌車なしでの運転は、4月13日に始まります。なお、東武鉄道によると、現時点では他のC11形へのATS搭載は予定していないといいます。

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