故ウェイクフィールドの愛娘が始球式で投じたのは父直伝のナックルボール!感動的な光景にファンの涙腺崩壊<SLUGGER>

4月9日(現地)、フェンウェイ・パークは愛と涙に包まれた。

その日、オリオールズとのホーム開幕戦を迎えたレッドソックスは、2004年のワールドシリーズ優勝20周年を記念して試合前にセレモニーを行った。

式典にはデビッド・オティーズ、マニー・ラミレス、ジョニー・デーモンなど、“バンビーノの呪い”を打ち破って86年ぶりの世界一を勝ち取った当時の中心選手が数多く参列したが、主役は彼らではなかった。

04年V戦士の一人でもあり、昨年10月に脳腫瘍のため57歳で亡くなったティム・ウェイクフィールドの愛娘ブリアナ(18歳)と兄のトレバー(20歳)だ。

ウェイクフィールドは1995年から実に17年間にわたってレッドソックスに在籍。ナックルボールを武器に、球団歴代3位の186勝を挙げた。慈善活動にも非常に熱心で、2010年にはロベルト・クレメンテ賞を受賞。引退後も地元放送局でコメンテーターを務めるなど、終生ボストンと深い絆を築いていた。それだけに、ウェイクフィールドの死は“レッドソックス・ネーション”に大きな衝撃を与えた。

それから4ヵ月後の今年2月、さらなる悲報が届く。ウェイクフィールドの妻ステイシーもすい臓がんでこの世を去ったのだ。たった4ヵ月の間に相次いで両親を失った兄妹の悲痛はいかばかりか。フィールドに現れた2人の姿を見た瞬間に涙腺が崩壊してしまったファンも少なくなかっただろう。 現役時代に父が着けていた背番号「49」ユニフォームを身にまとって始球式に登場したブリアナは、かつて父とバッテリーを組み、公私とも関係が深いジェイソン・バリテック戦略コーディネーターへボールを投じた。

しかもそれは、父から教わったナックルボールだった。「父さんみたいにはうまく投げられなかった。投げ方は分かってるんだけど」と語ったブリアナ。舞台裏では、式典に参加していたマサチューセッツ州知事にナックルボールの投げ方を伝授する一幕もあった。

始球式の直後、ブリアナとトレバーにワールドシリーズ優勝トロフィーを手渡したデーモンは次のように語っている。「このチームはファミリーなんだ。04年、俺たちは多くの障害を乗り越えた。その時から、俺たちはずっとファミリーなのさ」

今シーズン、レッドソックスはウェイクフィールドの背番号「49」とハートをあしらったパッチを左袖に着けて戦う。

構成●SLUGGER編集部

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