4月以降の食品値上げ、電気・ガス補助金終了…「家計逼迫」に備える予防策17

(写真:PIXTA)

「電気、ガスについては、LNGや石炭の輸入価格がロシアのウクライナ侵略前と同程度に低下してきた状況等を踏まえ、措置を5月末までとする」

3月29日、こう発言したのは齋藤健経済産業相。「電気・ガス価格激変緩和対策事業」として、’23年1月使用分から続いてきた補助金を、5月使用分から半分に縮小、6月使用分からはなくす見通しであることを示した。

生活経済ジャーナリストの柏木理佳さんが解説する。

「具体的には、家庭向け電気代は、1kW/時あたり3.5円、都市ガスは1立方メートルあたり15円の補助を受けています。補助がなくなれば2人以上の標準家庭で、電気料金は月約1千500円、都市ガスは月約500円増えることになります。補助金がなくなった6月使用分の電気・ガス料金の請求は、7月からです。以降、長期的に家計にダメージを与え続けます」

さらに再生可能エネルギー発電促進賦課金(再エネ賦課金)も5月分から引き上げられる。

「再エネ促進のために、太陽光発電などを国が買い取るための原資です」(柏木さん)

年度はじめに更新されるのだが、今年度からは標準家庭で月836円ほど増額されるのだ。

これだけでも負担が大きいが、さらに追い打ちをかけるのが食費だ。3月29日に発表された帝国データバンクの定期調査「『食品主要195社』価格改定動向調査―2024年4月」によると、4月の食品値上げは2千806品目にのぼると報告されている。情報統括部の飯島大介さんが語る。

「昨年10月に5千品目近くが値上げされて以降、月別の値上げ品目数は少なくなっていたので、半年ぶりに値上げラッシュが起きた印象です。4月に値上げとなった2千806品目の月平均値上げ率は23%。今年1月から7月まで、6千433品目が値上がりする見込みです」

値上げが顕著なのがハムやソーセージ、冷凍食品などの加工品で、2千77品目にのぼる。また調味料は369品目で、だし製品、トマトケチャップなどが目立つという。

「飼料代が高騰しており、牛肉に関しては、アメリカでは生産コストが高くなりすぎて、生産数を抑えています。そのため豚肉の需要が高まり価格が上昇したことで、ソーセージなど肉の加工品に影響が出たとみられます。調味料の値上げは、本体の製造コストばかりでなく、ペットボトルなどの容器をつくる資材高騰も一因です」(飯島さん)

たとえば日本ハムは家庭用のハム・ソーセージ55品目、加工食品38品目を1.1~27.6%値上げすると発表。不二家は、菓子15品目を5~12%値上げすると発表した。

「『カントリーマアム』は、内容量を19枚から18枚に減らすなどして対応しています」(柏木さん)

5月も大きな負担増が予測される。たとえばJ-オイルミルズでは、家庭用オリーブオイルが32~66%増と大幅値上げを発表している。

「5月以降には、オイル類の値上げが見込まれます。この1年で複数回値上げを重ねているケースも。短期的に下がることは考えにくく、今夏、もう一段階、価格上昇する可能性もあります」(飯島さん)

■さまざまな背景を抱える値上げは7月からどうなる

「’24年1月から7月に予定されている値上げの要因の24.4%が人件費の高騰、29.4%が円安、もっとも多いのが原材料高で89.1%でした。長雨や猛暑、干ばつなどで原材料が高騰するなどが影響し、’23年秋ごろから沈静化していた原材料高、そして円安が価格を押し上げたと分析しています」(飯島さん)

また、4月から配送業の労働コスト増により、宅配便も値上げ。佐川急便では平均7%程度としており、飛脚宅配便60cmサイズで70円増だ。

電気やガス料金の補助が終わり、食品の値上げラッシュが家計を直撃する7月には、どれほどの負担増になるのだろうか――。

まず電気、ガス料金の補助終了、再エネ賦課金改定の影響で月2千836円増になる。

食費に関してはどうか。

「野村総研のレポートなどを見ると、電気・ガス補助金がなくなることで、合計0.49%ほど消費者物価指数が押し上げられることが示唆されています。今年2月の消費者物価指数+2.8%がしばらく続いた場合、7月には+3.29%になる計算です」(柏木さん)

総務省家計調査によると、昨年7月の55~64歳が世帯主の2人世帯の食費は7万8千591円だから、+3.29%となると2千585円増に。さらに佐川急便を月2回使えば140円増だ。

総計すると、今年7月は、昨年7月と同じ買い物をしても、月5千561円、年間6万6千732円も負担増になるのだ。

家計圧迫の予防策として身につけたい節約ルーティンを、柏木さん、家電ライターの藤山哲人さんに伝授してもらおう。

■継続的な負担増に備え「すぐ始めたい」予防策17

【食費編】

「チラシアプリで最安値の買い物を。なかでもドラッグストアは、薬の販売で利益があるため、加工食品などは安い傾向があります」(柏木さん)

価格競争が激しいプライベートブランド(PB)も選択肢。イオンではPBの「トップバリュ」28品目の値下げを発表したばかりだ。

「なにより、食品を無駄にしないこと。1人当たり、年間約1万5千円(京都市調べ)の食品ロスがあるといわれています」(柏木さん)

【電気編】

「エアコンを稼働する季節が来ますが、設定温度は28度が目安とされています。27度から28度にすることで、電気代が年間820円節約できます。また、扇風機を併用すると、体感温度がマイナス3度に。

シーズン中、フィルターのお手入れは月2~3回のペースで。掃除機で軽く埃を吸い取り、中性洗剤とスポンジなどでやさしく汚れを落としましょう」(藤山さん)

こまめなフィルター掃除で年間860円の電気代節約になる。

また、テレビに関しては、画面の明るさを最大→中にするだけで、年間730円お得に。

「冷蔵庫の冷蔵室は、詰め込むのは70%まで。冷気の循環がよくなり、設定温度も強→中に変えたりできます。また庫内も見えるため、ドアの開閉時間や開閉回数も短縮できます」(藤山さん)

これらを実践すれば、年間3千290円の節電に。

「さらに冷蔵庫は天井から放熱されるので、30cmは空間を開ける必要があります」(藤山さん)

壁や天井と適切な間隔を持つことで年間1千220円の節約だ。

シーリングライトは、蛍光灯からLEDに替えるだけで年間1千836円も安くなる。

「炊飯器でお米を保温している人も多いですが、保温せず、使わないときはプラグを抜くことで年間1千240円の節電効果が。

野菜の下ごしらえで、IHコンロを利用している人も要注意。効率的に食材を温める電子レンジを利用することで、葉野菜で990円、根菜で940円ほど、年間の節電効果が期待できます」(藤山さん)

温熱便座は、季節に合わせて温度調整すること。年間で暖房便座を中→弱で710円、洗浄水温度を中→弱で370円の節電効果。

【ガス編】

ガスコンロの炎は、鍋底からはみ出ないようにすることで1.2%節約でき、鍋を火にかけるとき、蓋をすれば効率的に温められ、0.7%節約できる。給湯器の設定温度は40度→37度で1.6%節約、シャワー時間を1分短くすると4.2%の節約になる。

値上げに対抗するため、節約ルーティンを身につけよう。

※電気料金に関しては、資源エネルギー庁『省エネ性能カタログ2023年版』、ガス代に関しては、日本ガス協会の資料を参考

© 株式会社光文社