財務省の能登半島地震「復興提言」にチラつくコスト意識…損得先行で被災者の意向ないがしろ

倒壊家屋の撤去も進まず(C)共同通信社

損得勘定がミエミエだ。財務省は9日、財政制度等審議会の分科会を開き、能登半島地震の復興に向けて「コンパクトなまちづくり」を提言。人口減少地域の将来性やインフラ維持の負担を考慮すべきだと訴えた。

念頭にあるのは「コスト意識」だ。東日本大震災の復興事業では、地盤のカサ上げ工事などに6500億円余りを投入。しかし、人口減少を背景に、3割近い土地が活用されていない。その負い目からか、被災した過疎地域など、採算の合わなそうな地域にはなるべく予算をかけたくないのだろう。

そもそも、能登では復興どころか、復旧も思うように進んでいない。元日の地震から10日で100日。今もなお、6328人が避難生活を続けている。ライフラインの被害も甚大で、輪島市や珠洲市を中心に計約6150戸で断水が解消していない。

■議論を始める前に生活再建を

穴水町でボランティア活動を行うNPO法人「レスキューストックヤード」代表理事の栗田暢之氏はこう話す。

「復興はようやく一歩目を踏み出したといった感じです。水道が通り始めた地域でも、住宅内の水道管が破損して水が出ない家が多い。仮設住宅の数も足りず、仮に入居できても新しい環境になじめるよう、支援が必要です」

珠洲市でボランティア活動を行っているNPO法人「日本防災士会」理事の大月真由美氏もこう話す。

「全半壊した家屋を巡っても、罹災証明の判定に納得がいかなかったり、家主が避難して連絡がつかなかったり、解体はままならない。社会インフラ整備が進まず、働きたくても働けない状況の人がたくさんいます」

今も被災者は今後のことを落ち着いて考えられる状況にない。復興議論を始める前に、まずは生活の再建だ。

「復興の方針は、住民一人一人がどう暮らしていくかという重要な話。被災者の人々が納得して決める形にしなければなりません」(前出の栗田氏)

損得勘定だけが先行し、被災者の意向をないがしろにしてはならない。

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