【感染症ニュース】麻しんの患者報告数が7週ぶりにゼロに しかし、油断は禁物 1歳になったらすぐに麻しんワクチンの定期接種を

定期接種は1歳から!

国立感染症研究所の感染症発生動向調査週報2024年13週(3/25~31)によると、麻しんの患者報告数が7週ぶりにゼロになりました。今年の麻しん患者報告数は全国で計21人。都道府県別では大阪7人、東京6人、愛知・奈良2人、岐阜・滋賀・京都・兵庫1人の患者が発生しています。麻しんは世界的に患者数が増加しており、海外からの旅行者や、日本人の海外旅行が増加している今、再び麻しんウイルスが海外から持ち込まれ、患者が発生する可能性は十分にあります。

【2024年】4月に注意してほしい感染症!RSウイルス感染症徐々に増加 麻しん(はしか)流行に注意 医師「春休み明けもインフルエンザ下がり切らない懸念」

麻しんとは?

かつては「はしか」と呼ばれていた感染症=麻しん。麻しんは麻しんウイルスによって引き起こされる急性の全身感染症として知られています。麻しんウイルスの感染経路は空気感染、飛沫感染、接触感染で、ヒトからヒトへと感染が伝播し、その感染力は非常に強いと言われています。近年の患者発生例でも、偶然同じ公共交通機関を利用していて感染するなど、思いがけない場所でうつるがあります。症状としては、感染すると約10日後に発熱や咳、鼻水といった風邪のような症状が現れます。2〜3日熱が続いた後、39℃以上の高熱と発しんが現れます。肺炎や中耳炎を合併しやすく、患者1000人に一人の割合で脳炎が発症すると言われています。死亡する割合も1000に一人と言われ、決して軽く見てはいけない感染症です。

感染力の強い麻しんは、ワクチンで予防!

麻しんは免疫を持っていない人が感染するとほぼ100%発症します。また、免疫のない集団に一人の発症者がいると、12〜14人が感染するとされています。麻しんの予防にはワクチンが有効です。ワクチンの定期接種は1歳の時と、小学校入学前の1年間の2回接種を受けます。1回の接種で95%程度の人が麻しんウイルスに対する免疫を獲得することができ、2回の接種で1回目に免疫がつかなかった多くに人に免疫をつけることができます。ワクチンはMR(麻しん風しん混合)ワクチンが一般的になっています。

1歳になったら、すぐにMRワクチンの接種を

では、まだ麻しんのワクチンを接種してない0歳児は感染・発症はしないのでしょうか。感染症に詳しい大阪府済生会中津病院院長補佐感染管理室室長の安井良則医師は「生まれたばかりの赤ちゃんは、移行抗体といって、お母さんからさまざまな感染症に対する抗体をもらっています。麻しんについても移行抗体があり、お母さんが麻しんに対する抗体を持っていれば、赤ちゃんも移行抗体で麻しんウイルスから守られます。しかし、その効果は次第に薄れ、6か月ほどでなくなってしまうので、1歳になったらワクチンで予防をする必要があるのです」としています。

1歳になる前に麻しんのワクチン接種をする必要は?

MR(麻しん風しん混合)ワクチンの定期接種の第1期は1歳からとなっていますが、任意接種としては生後6か月から接種は可能となっています。感染が心配な場合は早めに接種をしたほうがいいのでしょうか。
安井医師は「生後6か月以降の0歳児の赤ちゃんに麻しんワクチンを接種するのは、周りに麻しん患者などがでた場合など、緊急的な場合に限られています。ワクチン接種の目的は免疫をしっかりとつけることですが、赤ちゃんに移行抗体が残っていると、その影響でワクチンによる免疫の獲得が十分にできない可能性があります。ですので、麻しん(MR)ワクチンの場合はその影響がなくなる1歳になってからワクチンを接種すると定められています」と語っています。

ワクチンは1歳児の定期接種を優先に

MR(麻しん風しん混合)ワクチンの供給量は十分に確保されていますが、現在生産量が減少しており、改善に向けて努力が行われている状況です。医療の現場で子どもたちに予防接種をしている安井医師はこのように話しています。「今は、免疫を持っていない1歳児に免疫をつけることが最優先だと考えています。万が一麻しんのワクチンが足りなくなることがあると、多くのお子さんが麻しんにかかってしまうかもしれません。そのようなことがないように、不要不急の方は麻しんワクチンの接種を控えて頂き、すべての1歳児がワクチン接種できるよう、ご協力いただければと思います」

引用
国立感染症研究所:IDWR速報データ令和6年第13週(3/25-31)、
厚生労働省:麻しんにかかる定期の予防接種の確実な実施に向けた乾燥弱毒生麻しん風しん混合ワクチン及び乾燥弱毒生麻しんワクチンの安定供給の徹底について(令和6年3月21日)

取材
大阪府済生会中津病院院長補佐感染管理室室長 安井良則氏

© 広島テレビ放送株式会社