23万人が熱狂!したF1日本GPを、タイヤ戦略の視点からピレリが徹底分析。角田裕毅の10位入賞を高く評価

2024年4月7日、F1第4戦日本GPが桜の咲き誇る鈴鹿サーキットで行われレッドブルのマックス・フェルスタッペンの優勝で終了したが、抜きにくいと言われる鈴鹿サーキットで、予想外に多くのオーバーテイクが見られるエキサイティングな展開となった。レース後、タイヤを供給するピレリは「狙いどおりの素晴らしいレースだった」とコメント。これはどういうことか、ピレリの分析を見てみよう。なお、初めての春開催となった日本GPは、3日間で22万9000人が来場する大成功となった。

各チームの戦略が入り乱れるエキサイティングな展開

予想以上に気温が上がった日曜日、決勝スタートでミディアムタイヤを選択したドライバーがフェルスタッペンをはじめ10名、ソフトタイヤを選択したのがアロンソはじめ10名と、タイヤ選択は真っ二つに分かれた。

日本グランプリ決勝当日、鈴鹿サーキットピット付近の路面温度と気温。予想以上の高温となった。
レース前に想定されたタイヤ戦略。鈴鹿サーキットの高レベルのグリップと摩耗性、天候を考慮すると、2ストップが主流と予想された。
日本グランプリのタイヤ戦略。3つのコンパウンドを使って、様々なタイミングでタイヤ交換が行われた。

グリッド上位陣の多くがミディアムタイヤを選択したのに対して、後方グループは序盤にソフトタイヤでジャンプアップを狙った。

ところが、オープニングラップの赤旗により、全ドライバー員がタイムロスなくコンパウンドを交換する機会を得ることになる。ここでメルセデスの2人はミディアムからハードへ、RBの角田とハースの周はミディアムからソフトへ、アルピーヌの2人とウイリアムズのサージェントはソフトからハードへと履き替えて、2度目のスタートに挑んだ。

レースは事実上2周短縮されて再スタートとなったが、各チームはピットストップとタイヤコンパウンドの選択、ライバルとの関係などの観点から戦略を練り直し、さまざまなレースパターンを模索することになる。

そして気温が高くなったにもかかわらず、3つのコンパウンドすべてが適切に機能していたこともあり、各チームの戦略が入り乱れるエキサイティングな展開となった。

アンダーカットは非常に効果があったが、早めにピットに入ったドライバーはスティントの終盤で不利な状況に陥り、それによりパフォーマンスの差が生まれ、オーバーテイクが容易となったこともレースをおもしろくしていった。

レースはマックス・フェルスタッペン(レッドブル)が圧倒的なパフォーマンスを披露して優勝を飾ったが、そんな中でも注目を集めたのはフェラーリのシャルル・ルクレールとRBの角田裕毅で、ルクレールは唯一、事実上の1ストップで8番手スタートから4位に入った。ピレリもこれには驚いているようで、「並外れたレース」と表現している。

角田の10位入賞はタイヤマネージメントがポイントだった

一方、予選で10番グリッドを獲得した角田は上位陣と同じミディアムタイヤでスタートしたが、出遅れて1コーナーまでにポジションを落とし、1周目のデグナーを12番手で通過したところで、ダニエル・リカルドとアレクサンダー・アルボンのクラッシュで赤旗中断となる。

角田裕毅はランス・ストロール(アストンマーティン)を抑えて10位でフィニッシュ。

その後レースは中断時の順位で再開されることになったため、12番手スタートとなった角田は作戦を変更して再スタートではソフトタイヤを装着。この選択もあって一時9番手まで順位を上げたが、ジョージ・ラッセルに抜き返され、バルテリ・ボッタスにアンダーカットされて事実上の11番手まで下がってしまう。

それでも、2度目のピットストップでのチームの素早い作業で11番手のポジションを取り戻し、ニコ・ヒュルケンベルグ(ハース)をS字でオーバーテイクして10番手に上がると、そのままハードタイヤで残り31周を走りきり、10位入賞を果たした。

ピレリも角田の走りとチームの戦略を絶賛。「地元のヒーロー角田裕毅の10位フィニッシュを祝うことができたのはとても嬉しい。今日改めて、F1は素晴らしいレース形式であることが証明された」とコメントしている。

2024年F1第4戦日本GP決勝 結果

1位 1 M.フェルスタッペン(レッドブル・ホンダRBPT)53周
2位 11 S.ペレス(レッドブル) )+12.533s
3位 55 C.サインツ(フェラーリ )+20.866s
4位 16 C.ルクレール(フェラーリ)+26.522s
5位 4 L.ノリス(マクラーレン・メルセデス)+29.700s
6位 14 F.アロンソ(アストンマーティン)+44.272s
7位 63 G.ラッセル(メルセデス)+45. 951s
8位 81 O.ピアストリ(マクラーレン・メルセデス)+47. 525s
9位 44 L.ハミルトン(メルセデス)+48.826s
10位 22 角田裕毅(RB・ホンダRBPT)+1L
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リタイア 3 D.リカルド(RB・ホンダRBPT)
ファステストラップ 1 M.フェルスタッペン(レッドブル・ホンダRBPT)

■角田裕毅(Visa Cash App RB Formula One Team) コメント

予選10位 決勝10位

「1回目のスタートでポジションを落としてしまいとても残念でしたが、すぐにその後の2回目のスタートに向けて切り替えて集中しました。2回目のスタートはうまくいって、いくつかポジションを上げることができました。今日の大きな見どころはピットストップだったのではないでしょうか。メカニックたちが本当にすばらしい仕事をしてくれたおかげで、2台のマシンを追い抜けました。あのピットストップがなければポイントを獲得することは難しかったので、チームのみんなのおかげだと思っています。日本のファンの皆さんも本当にすばらしかったです! サーキットで直接、またはテレビを通して応援してくれた方々を前に、ホームGPで初めてポイントを獲得できて本当にうれしいです。ほかのマシンと比べてストレートスピードが足りないことは分かっていましたが、それと引き換えにダウンフォースがあったので、ダウンフォースが有効に作用するS字区間が唯一のチャンスでした。いいオーバーテイクを何度かできて、とても楽しく走れました。タイヤマネジメントの面では、今までで一番の走りができたように思います。私がモータースポーツを始めたこの場所でのポイント獲得は、とても特別な意味を持ちます。支えてくれたすべての方々に感謝しています。今日はまるで優勝したような最高の気分です」

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