「サッカーを楽しめなかった」湘南DF髙橋直也が過ごした“負の2か月”「自分のプレーを『恥ずかしい』と感じるくらい...」

湘南ベルマーレのDF髙橋直也は、“想定外”の不調に陥っていた。

この大卒ルーキーは昨季、特別指定としてリーグ戦で4試合、ルヴァンカップで2試合に出場した。3-5-2の右ストッパーやアンカーで、持ち前のアイデアと鋭い読みで攻守に存在感を発揮。また、大阪府代表として関西大で出場した天皇杯では、浦和レッズと対戦し、Jトップクラスの攻撃陣と互角に渡り合ってみせた。

実力は間違いない。今季の開幕スタメンも夢ではないはず。そんな期待を寄せられた髙橋だったが、6節の東京ヴェルディ戦までメンバー外が続いた。「プロ相手でも自分の持ち味は通用する」と昨季に築いた自信を徐々に失い、負の感情に苛まれたという。

「シーズンが始まってから、コンディションが上がらない時期が続きました。自分のプレーを自分で見て『恥ずかしい』とすら感じるくらい上手くいかなかった。サッカー人生で初めて自信を失ってしまい、プレーするのがつらかったです」

大学生としてチームに参加していた昨季は、思い切りの良いプレーを次々に披露。守備的なポジションからの果敢な持ち上がりで、Jリーガーを翻弄した。

ただ、今季はチーム内の決め事を意識しすぎた面もあるのだろう。やらなければいけないタスクが脳内を支配し、自分らしさを見失った。始動からの約2か月間は、メンタル的に追い込まれ、ついには「サッカーを楽しめなかった」と感じるまでに至ったという。

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それでも、1か月前頃から少しずつ以前の自分を取り戻した。迷いが消え、精神面で余裕が生まれて、フィジカル面のコンディションも上向いてきたなかで、出番はなかったが7節・サンフレッチェ広島戦で今季初のメンバー入りを果たした。

「自分で『良くなってきているな』と感じていたなかでのメンバー入り。手応えがひとつ形になったのは良かったです。最近は以前のように、冷静にプレーできる回数が増えてきているし、自分らしいアイデアや仕掛けが出てきました」

復調の背景には、サポーターからの温かい声があった。

「期待してもらっている声は届いています。自分は期待を重く受け止めるのではなく、力に変えられるタイプ。『直也が出たから勝てた』と言ってもらえるようなプレーを見せられるような良い準備を、近頃はできています。出遅れた分、ここからしっかりと期待に応えたいので、もっと自分に期待してほしいですね」

今季からチームで取り組む4-4-2では、主にCBで準備しているという髙橋。6節の東京V戦と7節の広島戦で同ポジションにパスセンスが光る鈴木雄斗が起用されていることからも分かるように、山口智監督はCBに高いレベルのビルドアップを求めている。

足もとの技術に自信を持つ髙橋は、実践で指揮官の信頼を掴み、広島戦のメンバー入りを次につなげられるか。22歳のマルチな守備者に大きな期待を寄せたい。

取材・文●岩澤凪冴(サッカーダイジェスト編集部)

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