祖母が「大学合格のお祝いに」と、学費を全額出してくれるそうです。「300万円」振り込んでくれましたが、このまま受け取って大丈夫でしょうか…?

300万円を受け取る問題点

祖母から300万円を一括で受け取ることで起こる問題点について2つ解説します。1つは税金面、2つ目は親族問題です。親族問題については必ず起こるというわけではなく、「起こる恐れがある」と捉えてください。

贈与税がかかる

まずは税金面で、贈与税の対象になる点に注意しなければなりません。贈与税が非課税で済む贈与額は、年間の累計で110万円までだからです。300万円であれば、110万円を差し引いた190万円に対して10%、つまり19万円の贈与税がかかります。

なお、贈与税には「贈与税がかからない財産」として、「夫婦や親子、兄弟姉妹などの扶養義務者から生活費や教育費に充てるために取得した財産で、通常必要と認められるもの」という規定があります。

祖父母は直系血族であり扶養義務者に該当することから、大学の学費として300万円渡したのであれば、この規定に該当し、全額が非課税になるような気がしますが、今回のケースでは残念ながら該当しません。

なぜなら、「生活費や教育費として必要な都度、直接これらに充てるためのものに限られる」という条件があるからです。今回のケースでは学費の名目で贈与を受けてはいますが、学費の請求があったタイミングではありません。また大学に在学する期間分を一括で渡していることから、贈与税がかからない財産には該当しないとみなされるでしょう。

また、贈与税がかからない財産には、「個人から受ける香典、花輪代、年末年始の贈答、祝物または見舞いなどのための金品で、社会通念上相当と認められるもの」もあります。今回のケースの場合、「お祝いとして学費を全額出す」ということなので、「祝物のための金品」とも受け取ることができます。

ただ、大学の合格祝いとして300万円というのは「社会通念上相当と認められるもの」には該当しない可能性が高いでしょう。いくらまで認められるのかについては正確な線引きがあるわけではありませんが、税務署が認める金額を差し引いた部分に対しては贈与税がかかります。

親族間トラブルの引き金になる可能性

2つ目の親族問題についてです。祖母の子ども(孫の親)が複数おり、それぞれの子どもに孫が複数いる場合、すべての孫の進学時に300万円を渡しているのであればトラブルになる可能性は低いでしょう。

しかし、孫の1人に対してだけ特別に300万円を渡すのであれば、親族の誰かにその事実を知られた際にトラブルになるかもしれません。孫本人は気に留めていないとしても、祖母の子ども(孫の親)が不公平感を主張するというケースも考えられます。

問題点の解決方法

では、税金面、親族問題それぞれの問題をどう解決したらよいのかについて解説します。

贈与するタイミングを分けてもらう・教育資金一括贈与の利用

今回のケースの場合、300万円を一括で渡したため贈与税がかかるでしょう。しかし、年間110万円を超えない範囲で複数年にわたって贈与を受ければ、贈与税は発生しないため、分割して受け取ることを検討してみてください。

もしくは、贈与税がかからない財産に該当するように、「必要な都度、直接教育費に充てる」タイミングで受け取るのはどうでしょうか。

また、「直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税制度(通称:教育資金一括贈与)」という制度もあります。祖父母や両親からの教育費の贈与であれば、最大1500万円まで贈与税が非課税になります。

お祝いを渡す基準を設け、平等にしてもらう

親族間トラブルに対する対策は、孫全員に対して平等に対応してもらうことです。全員に300万円を渡すのが難しいという場合には、「かかる学費の3割」など平等のルールを設けてもらってはどうでしょうか。受け取った孫やその親の親族内での立場が悪くならないよう、渡す側にルールを整備してもらいましょう。

まとめ

祖母から300万円を一括で受け取った場合、学費やお祝い金であったとしても贈与税が発生する可能性が高いでしょう。また、贈与の不平等による親族間トラブルも懸念されます。孫自身がどうこうできる問題ではないので、300万円が振り込まれる前に祖母と親に相談してもらうとよいですね。

出典

国税庁 No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)
国税庁 No.4405 贈与税がかからない場合
国税庁 No.4510 直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税

執筆者:佐々木咲
2級FP技能士

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