『シリーズ人口減少』②閉校相次ぐ学校現場 未来を担う子どもたちにどんな環境を提供するのか 学校や地域の取り組みを紹介【高知】

人口減少が進む高知県で何が起き、どんな対策が取られているのかを紹介し未来の社会の在り方を考える「人口減少」シリーズ。今回は、閉校が相次ぐ学校現場です。

3月末で休校・廃校となった県内の公立小・中学校は合わせて10校。少子化に伴い、高知市以外のエリアでは、毎年小・中学校の閉鎖が進んでいます。県内の市町村立小・中学校の数は2020年は292校でしたが今年度は274校となり、この4年間で18校減りました。

3月末で閉校した学校の1つ津野町の精華小学校です。昨年度は1年生から6年生まで42人が学んでいて、児童数が極端に少なくなったわけではありませんが、150年の歴史に幕を閉じることにしました。

市町村立の学校の場合、閉校を決めるのは市町村で、精華小の場合は「複式学級の解消」が大きな目的でした。精華小では、1年生と6年生以外は他の学年と混合でクラスを編成する複式学級でしたが、閉校して葉山小学校と統合することで複式学級は解消されます。

津野町・久寿教育長

「個々の子供たちが高校で高知市内、大きな学校へ出るときに、自分っていうものが多様な考えの中で発揮した学習ができるのか、そのためにはやはり大人数の中で学習を進めていって環境を整え、子どもたちの精神面も高めていくことが重要ではないかと考えております」

精華小は開かれた学校づくりが特徴で、地域住民が授業に参加することもありました。

3月、6年生の教室では、「未来の津野町」をテーマに子どもたちが住民に向けて町の未来像を提案する授業が行われていました。

津野町の人口は、1960年は1万3千人ほどでしたが3月末時点では5282人と、この40年で半分以下に減り、人口減少は大きな課題です。

子どもたち

「この資料は今から30年後の予測のグラフで、このグラフでは高齢化や少子化だけではなく、人口も2分の1ほどに減っています」

「津野町にはこのような川や山や木などの自然がたくさんあるのに、それを活用していないのが課題だと僕たちは感じました」

子どもたちは津野町に多くの人が訪れる未来を提案し、町を活性化するために田んぼを使った収益事業など他県の事例を紹介。授業に参加した住民と意見交換しました。

地域住民

「あんまり大きな田んぼが周囲にはないから段々畑を生かすとかね。花でアートやってみたら?」

子ども

「花?いい!人がたくさんいて笑顔があふれるような町になってほしい」

子どもたちの率直な希望を聞いた住民は。

住民

「閉校になるということは寂しいことですけど、あと地域をどうしようかということが、すごくこの地域に住んでる者としてこれからも考えていかんといかんので」

子どもたちから地域の課題解決を託された大人たち。閉校を機に、校舎を利用した催しなど新たな展開も今後、話し合われるかもしれません。

3月23日に行われた精華小閉校式には、卒業生や地元住民など250人以上もの人たちが参加しました。

挨拶

「これからも精華小学校と共に歩んだ歴史と功績に誇りを持って、この地域の発展に貢献していくことを心に誓います」

式では6年生8人が白石太鼓を演奏しました。精華小は2010年に白石小と統合し、その際に白石小の伝統だった白石太鼓を引き継ぎ、精華小の6年生が総合の学習の時間に習ってきました。

しかし、葉山小に統合すると人数が多くなるため授業で実施するのは難しくなります。 このため、ひとまず白石太鼓はここで一区切りで、最後の演奏にみんなが耳を傾けました。

閉校式には外国メディアの姿もありました。取材していたのはオランダの国営放送局、オランダでも少子化は課題だといいます。

オランダ人記者

「学校は1990年に1万8000校くらいあって、今は7700校くらいになっているので、日本と同じ状態になっている。地方の方に問題が多いので、参考になると思って。ここには地域復興の活動もあるのでそれを含めてオランダのニュースで取り上げようと思う」

日本だけでなく、様々な国で少子化は大きな課題となっており、 対策に注目が集まっているのです。

閉校式では、子どもたちの歌声を聞いて涙ぐむ卒業生の姿もありました。

参加者

「卒業して50年以上になるけど、でもやっぱりずっと思い出して、ちょっと涙ぐんでしまった」

保護者

「自分もずっと通ったので、すごい閉校になって寂しいです。精華小学校は全学年が仲良かったので、葉山小学校でも同じように1年生から6年生までみんな仲良く過ごしてもらえたらと思います」

一方、子どもたちは統合後の生活を楽しみにしていました。

子どもたち

「いま精華でできなかったことをしたい。大人数でいっぱいやりたい」

「新しい仲間とも遊べるから楽しみでもある」

葉山小との統合は子どもたちにとっては魅力的なようです。

津野町・久寿教育長

「閉校して良くならないと閉校する意味がないと思います。閉校して子供たちが明るく輝く、そして自分たちこれから先、生きていく力を身に着けるそこに焦点を当ててますので」

人口減少が避けられない中、今後も学校の統廃合は続きますが、各学校が育んできた優れた文化や地域とのつながりを生かし、子どもたちが学ぶ環境をより良いものにできれば、閉校は前向きなものとして捉えることもできます。

未来を担う子どもたちにどんな環境を提供するのか、学校や地域など当事者だけでなく私たち一人一人が考え、関わっていくことが“こうちの未来”を創ります。

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