Qi10 フェアウェイウッドを筒康博が試打「高慣性モーメントFWの代表格」

“10K”を受け継ぐFWのスタンダードモデル ご意見番クラブフィッター評価は!?

テーラーメイドが提唱するやさしさの新世界基準“10K”。上下左右の慣性モーメント合計値1万kg・m2超えを果たしたドライバーシリーズを受け継ぎ、同社史上最高という慣性モーメントを実現したフェアウェイウッド(以下FW)をピックアップする。果たして、そのやさしさはドライバーに通ずる? いや、それ以上!? ヘッドスピード(以下HS)の異なる有識者3人が採点。ご意見番クラブフィッター・筒康博がスタンダード「Qi10 FW」の試打評価を行った。

「はっきり“ミニドラ”化したFW あとはサイズ&好みの顔の問題か」

1~2球目までつかまり切らず右へ 徐々にタイミングが取れてきた

―率直な印象は?
「同社では、数年前からドライバーでもFWでもないヘッド体積300cc台のミニドライバーを販売していますが、そのテクノロジーを反映させた印象を強く受けます。年々同社FWに“ミニドラ”要素が生かされている感覚はあったのですが、今作で明確にその流れを感じました。直進性が高く、ロフト角以上に高く上がりやすい性能。フェードとドローを打ち分けるよりも、ドーン!と直線的に高弾道で狙う部分は、最新ドライバーの性能をコンパクト化したミニドライバー要素を感じることができます」

同社FWの代表するテクノロジー「Vスチール」は継承

―ミニドライバーの要素が感じられる…?
「はい。前作『ステルス2』までは、ドライバーとは別ラインというか、FW独自の進化を遂げてきた印象でした。ですが、今作ではドライバーとの連動感が増し、“10K”に象徴される高慣性モーメント化の流れを汲(く)んだFWに変化しています。これまでドライバーと同じFWシリーズを選び、思うように打てていなかった人からすると、今作は失敗しないモデルになっているのではないでしょうか。逆に、今までの同社FWが好きだった私のようなゴルファーにとっては、この変化についていけず、乗り遅れてしまう危険性も含まれています」

松山英樹もほれ込んだオーソドックスな顔立ち

―兄弟モデル「―MAX」「―ツアー」と比べると?
「十分スタンダードモデルで投影面積が大きくて安心感を抱けるので、もうひと回り大きい『―MAX』は、やや過度なサイズ感のように感じます。スタンダードと同じ長さでも(3W純正シャフトで43.25インチ)短尺感を覚え、従来サイズに慣れている人には結構驚かれる見た目になっているでしょう。総重量も非常に軽く感じられ(3W純正の硬さSで315g、スタンダードは318g)、まさにTHE・オートマチックモデル。3機種の中から選ぶなら、私は『―ツアー』になるでしょうか。打感も顔も、うまく打てたときの気持ちよさも一番。ティショットで使うというよりは、2打目で多少の傾斜やライが悪くても打てるクラブと考えるとベストな投影面積であり、以前より難しさを感じさせない『ツアー』のライン(前作ステルス2でいえば『プラス』)に好感が持てました」

左からMAX、スタンダード(今作)、ツアー

―プロの中では「ツアー」ではなくスタンダードが人気のようですが、なぜだと思う?
「私はゴルフ歴が長く古いタイプなので、FWだとティアップしたときはドロー、芝上から打つときはフェードと弾道イメージを変えて考えるのですが、おそらく今の若いプロはそういった思考で臨まないと思われます。最初からストレートで直線的にターゲットを狙っていく。そう考えると『ツアー』ほどの操作性を必要とせず、ある程度動かせて寛容性とのバランスが取れているスタンダードに需要が集まったのかなと推測します」

モデル、番手別にフェースの厚さを部分的に変える「ICTフェース」を採用

―歴代ミニドライバーと比べると?
「そもそもロフト角11~12度の“ミニドラ”と比較するのはナンセンスですが、似ている要素を含めてもFWの代わりに差し替える選択肢はないでしょう。理由はサイズ感。私の場合3、5Wでは、多少ボールが沈み込んだライからでもボールの下に潜らせて打っていきたいため、ヘッドサイズはより小ぶりなほうが好きだからです。逆にティショットで安心感を抱きたい人には、3Wだけ『MAX』、5、7Wはスタンダードと、番手によってコンビネーションして使うパターンも考えられる。下の番手であるレスキューとの組み合わせも含め、FWはFWとしての役割がしっかり存在しているといえます」

「スタンダードや『―MAX』より『―ツアー』の感触が良かった」(筒)

―どのような人向き?
「ゴルフ歴10~20年以内のゴルファー向き。大型ヘッド460ccドライバーでゴルフを始めた歴の浅い方で、これから90、100切りを目指す人に適していると思います。ドライバーとの違和感がなくなった今作の特徴を活かすなら、以前のFWのイメージを持っていない人のほうがハマる確率は高いでしょう。年齢層やパワーのあるorなしでは決めず、投影面積の好み=どういう状況でよくFWを使うかを考え、そこで一番イメージできる大きさを選ぶべきではないでしょうか」

FWはFWとして評価 操作性を考えると「ツアー」のほうが…【総合評価4.4点】

【飛距離】4.5
【打 感】5.0
【寛容性】5.0
【操作性】3.5
【構えやすさ】4.0

・ロフト角:10.5度
・使用シャフト:Diamana BLUE TM50(硬さS)
・使用ボール:リトルグリーンヴァレー船橋専用レンジボール

取材協力/トラックマンジャパン株式会社、リトルグリーンヴァレー船橋

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