企業のリスク分散 北海道の可能性は

今週のけいナビの特集は、「企業のリスク分散」がテーマ。全国的に大きな地震が頻発する中、ほかの地域に比べ災害のリスクが比較的少ないと言われる北海道の可能性を改めて考えた。

札幌駅前通りに面する札幌三井JPビルディング。2014年に完成したこのビルの中に、竣工と同じタイミングで拠点を構えたのが大手生命保険会社のアクサ生命だ。リスク分散の観点から、東京と札幌に本社を置く「2本社体制」を取り入れた。

野島崇札幌本社長は、「2011年に発生した東日本大震災をきっかけに、より社内でリスク分散の必要性が認識された結果、札幌本社が置かれた」と説明。札幌本社では現在約500人が働き、コールセンター業務や保険の新規契約に関する業務など15業務を担っている。待遇は東京、札幌のどちらで採用されても変わらないという。

アクサ生命は現在、中島公園のそばで新たなオフィスビルを建設中。14階建て、延べ約5万3000平方メートルで、自社の本社機能のほか他社のオフィスも入居する。北海道初進出の高級ブランド、インターコンチネンタルホテルも入る予定だ。

道によれば、リスク分散を目的に拠点を北海道に設ける企業は、東日本大震災以降徐々に増加。2022年度は過去最多の35件に上った。そのような状況の中、北海道に目を向けた企業のひとつが、大阪のばね製造メーカーの三協精器工業。去年7月、道北の士別に工場を構えた。

士別に工場を置いたきっかけは、2016年に発生した熊本地震だ。熊本にある工場が激しく被災。機械類が倒れたりし、復旧に相当の時間を要した。赤松賢介社長は「大阪は南海トラフの影響が懸念されるし、熊本もいつまた大きな断層のずれがあるか分からない」とし、内陸で津波の心配がない士別は適地だとする。

士別では、羊を飼育し販売する事業も行っている。ばね製造以外の副業にも力を入れることで雇用を生み出し、地域に貢献したいという思いからだ。

羊の肉は札幌の狸小路にある直営店「士別バーベキュー」で提供している。様々な事業を行うことも、リスクの分散につながるという考えからだ。羊の胎盤から抽出したプラセンタエキスを原料とした化粧品の製造販売も始めたところだ。

総合化学メーカーのカネカは、約100億円投じて苫小牧に医療機器を製造する工場を新設、7月から稼働させる予定だ。

こちらもリスク分散が理由だが、もうひとつの大きな理由が、広大な土地を確保できる点。カネカ北海道の岸正吉社長は「将来的な工場の拡張や新設にも対応しやすい点が大きな決め手となった」とする。道は、こうした企業の動きに呼応しリスク分散の適地であることを全面に押し出しながら、誘致活動を強化している。

番組コメンテーターの平本健太北大大学院教授は、「工場ならここ、データセンターならここ、といった具合に誘致場所をすみ分けすれば、特定の地域に立地が集中するといったことがなくなるのではないか」と指摘。その上で「道外の人からよく聞くのが『子ども学ばせる良い学校はあるのだろうか』という話。教育環境を充実させることも、誘致を強化する上では重要になる」と提言した。

(2024年4月13日放送、テレビ北海道「けいナビ~応援!どさんこ経済~」より)

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