「彼氏と金銭感覚が合わない…」長続きカップルになるために「作るべきルール」

葵(24歳)、計画性レスの彼氏の奨学金が400万円。将来、二人で払うのは嫌かも

【レスなひとびと】vol. 237


葵は、丸の内のIT企業で働く会社員。もうすぐ3年目。華やかな暮らしが好きな葵は、とにかく給料重視で就活の荒波を乗り切った。よって年収は同世代の1.7倍。やりきった感で何度もママとねえちゃんと乾杯した。

星空を見上げて彼氏の正人に電話。

「お疲れ〜!」
華金、同期飲みの帰り道。ギリ会社徒歩圏内に家を借りているので帰りは徒歩。
「正人、今日は何してたの?」
「バイト。いやー、今日も忙しかった」
「えっ、今日は合説じゃなかったの?」
「いや、バイトリーダーに急遽入れないかって言われちゃって。2割増でバイト代出すって言われたから、行ってきた」
「ふーん」
「葵は? 遅かったね」
「同期と飲み会だよん。 超―いい店だったんだよ。写真送るね」

写真は、東京駅の駅舎がバックに映る、夜景が綺麗なテラス席。葵の隣には、ほっぺがくっつきそうなくらい近くに男性の同僚がいて、楽しそうにピース。

正人は大学院生。今年が就活の年だ。でも、葵と違って家庭に余裕がなく、仕送りなしの一人暮らし。だから、就活よりもバイトを優先させている。すでに奨学金を合計400万円借りているのに。

葵は思う。正人にはなんとしてでも、葵みたいに給与水準の高い会社に入ってもらわないと。年収も家事もフィフティで依存しない結婚が夢。本音を言えば、将来、結婚したとして400万円を肩代わりしたくない。

「そんなふうに計画性ゼロじゃ、いい会社入れないよ」
「でも、バイトしないと今の生活が立ちゆかないしさ」

正人は無駄遣いするほうではない。どちらかといえば倹約家。バイトを休む余裕はないのだろう。

「就活中くらい、親に頼れないの?」
「無理だよ。葵みたいに学費も生活費も出してもらえる家の人にはわからないって。
住んでる世界が違うんさ」

「……」何も返せない。

週末、正人とのお花見デート。シートを敷いて、パン屋で調達したサンドイッチと
缶ワイン。
正人は、あれからずっと、葵の同僚との飲み会のことが気になって焦っていた。あのピース野郎は葵を狙ってんじゃないかと。こんなシートデートでいいのかよ。

華やかな場が好きな葵だ。もっともっとバイトしてお金を稼いで、いい店に連れていかないと。ってことで、月末にがんばった。

「えっ、お店予約してくれたの? ありがと」
桜が見えるテラス席。春らしいパステルツイードのワンピースに身を包んだ葵が、にっこり微笑む。ちょっと無理してでも連れてきてよかった。

そう思った正人だったけれど…。

食事のあと葵に聞かれた。
「ねえ、正人、お金ないんじゃないの?」
ちょっと機嫌が悪そうだ。いい店で喜んでくれてると思ったのに。

「いや、葵が同期とすげーいい店行ってただろ。それ見て俺、焦っちゃって。だから最近、バイトがんばってた」
「頑張るとこ違ってない? いい会社に就職しないと奨学金も返せないよ。金銭感覚一緒でないとやっていけない」

せっかくのスプリングデートが台無しだ。


【三松さんからのコメント】

就活、大変なのはよくわかります。自分に一致する理念と待遇の板挟み。でもわがまま言ってたらどっこも内定取れない。そんな時代なのですよね。
高給、福利厚生安定の会社に就職したいなら、葵さんの言う通り計画性をもって動くことが重要。就活の辛さを知っている葵さんが、焦る気持ちもわかります。

ただ、日本学生支援機構の調査によると、奨学金を借りている学生は、全体の5割。葵さんはそのことをご存知でしたかね。
親に学費や生活費を出してもらえることは、あたりまえではないのです。

どうしても正人さんの時間を捻出したいのなら、一緒に住んで生活費を軽減してあげてもいいのかもしれません。
しかし結婚確定のわけではないし、時間があれば高給会社に入れるわけでもない。葵さんがいつも奢るのもおかしいし。悩みどころですね。

ならば、会社選定と就活のノウハウをみっちり伝授することはできるのでは。バイトだって、立派なガクチカとして語れます。生活費を稼ぐため、一生懸命働いていたのなら、そのなかで工夫したことや体験談もあるのではないかと。それらを二人で洗い出す。

葵さんは正人さんと将来も一緒にいたいゆえに、奨学金のことを心配している。正人さんは、将来より現在を心配している。ピース野郎に寝取られたくないから。
「そこは安心して。あなたしか愛していない」と伝えるのも大事。
葵さんを喜ばせたいためにバイトをがんばっているってことを認めて、受け止めましょう。二人が一緒にいられるようにするのに、まだまだできることがありそうです。

「計画性レス彼氏、ひどいやつはいっぱいいる。給与全部ギャンブル…とかね。お金ないのに高いゴハン食べる彼ってのもアルアルでしょ! 気になったら、目標設定シートをあなたが作ってあげればいいのよ。目標達成ごとにご褒美を出すってことで、やってみよ」

三松 真由美
恋人・夫婦仲相談所所長・コラムニスト。バブル期直後にHanakoママと呼ばれる主婦の大規模ネットワークを構築。その後主婦マーケティング会社を経営。主婦モニター4万名を抱え、マーケティング・商品開発・主婦向けサイト運営に携わる。現在は夫婦仲、恋仲に悩む未婚既婚女性会員1万3千名を集め、「ニッポンの夫婦仲・結婚」を真剣に考えるコミュニティを展開。「セックスレス」「理想の結婚」「ED」のテーマを幅広く考察し、恋愛・夫婦仲コメンテーターとして活躍中。講演・テレビ出演多数。20代若者サークルも運営し、若い世代の恋とセックス観にも造詣が深い。コミック『「君とはもうできない」と言われまして』(kadokawa)好評発売中。ほか各人気コミック作家としても活躍中。

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