「旧朝香宮邸を読み解く A to Z」アルファベット26文字を頭文字にしたキーワードで謎解き建物ツアー
東京都庭園美術館では開館40周年記念「旧朝香宮邸を読み解く A to Z」[2024年2月17日(土)~5月12日(日)]を開催中です。
重要文化財・旧朝香宮邸(きゅうあさかのみやてい)にまつわる「A to Z」を頭文字にしたキーワードをもとに建物の謎を読み解きながら観覧してきました。
各部屋に置かれた「A to Z」のエピソードが記載されたカードを集めながら巡る建物ツアー。素のままの旧朝香宮邸の姿を体感出来る展覧会です。
※本展会期中は本館(旧朝香宮邸)の一部と新館での写真撮影が可能です。撮影の際は注意事項をご確認の上、館内スタッフの指示に従い撮影してください。
キーワード「A to Z」で読み解く素のままの旧朝香宮邸
1933年(昭和8)に竣工した重要文化財・旧朝香宮邸は、皇族・朝香宮家(あさかのみやけ)の邸宅として建てられたアール・デコ様式を残す貴重な建物です。
外務大臣・首相の公邸や迎賓館として使われた時代もあるそうです。
室内装飾を手掛けたのは、フランスの装飾美術家アンリ・ラパン。2階の朝香宮家のプライベートスペースと庭園を含めて全体の設計を担当したのは宮内省内匠寮(くないしょうたくみりょう)。
アール・デコ様式で統一された日仏の装飾建築デザインが融合した世界的に見ても稀有な建物だそうです。
"S" SATINE(サチネ)ガラスレリーフの扉、"T" TEKKO(テッコー)第一応接室(だいいちおうせつしつ)の壁紙
正面玄関を入ると、ルネ・ラリックの翼を広げた女性像のガラスレリーフが出迎えてくれます。
キーワード"S" SATINE(サチネ)のカードを手に取ると「ガラス表面の仕上げに用いられたつや消し加工」のこととあり、ラリックは「SATINE(絹のような)と呼んで愛でて」いたそうです。
正面玄関を入って左側の第一応接室も公開中で、中に入ることが出来ました。キーワードは"T"、TEKKO(テッコー)。
落ち着いた雰囲気の室内は、TEKKO(テッコー)のグリーンのストライプの壁紙が。竣工当時の品番や色味も近いものが生産可能だったことから、1994年(平成6年)に再現されたものだそうです。
"U" UNEVEN HARMONY 大広間の空間のリズム、"Q" QUADRUPLE CREATIVITY 4人のアーティストの美術作品 大客室
キーワード"U" UNEVEN HARMONYの大広間。四角い格子の中にある丸い電球が整然と並ぶ天井。アール・デコ様式で装飾されたラジエーターカバーも直線と曲線のデザインです。
普段は文化財保護のためカーペットで覆われた床の一部が公開されていました。高級木材で組まれた矢羽根(やばね)模様の美しい寄木(よせぎ)床です。
重厚感のある大理石のマントルピースをアーチが挟んで、直線と曲線のコントラストが大広間の空間にリズム感を作っています。
"Q" QUADRUPLE CREATIVITYのキーワードは、大客室の室内装飾を手掛けた「4人の作家」。
室内装飾の設計をしたアンリ・ラパン。シャンデリアや、ガラスレリーフを手掛けたルネ・ラリック。マックス・アングランが手掛けたのはエッチング・ガラス扉。ガラス扉の上部の半円形の装飾をデザインしたレイモン・シュブ。
アール・デコ様式の粋を集めた装飾性豊かな大客室は、旧朝香宮邸を象徴する美術作品と言えます。
2階広間からプライベートスペースへ
"A" AIDA AND CARMEN アイーダとカルメン
2階広間には自動演奏のピアノが置かれていたそうです。
"A"、AIDA AND CARMENは、朝香宮鳩彦王(あさかのみややすひこおう)の次女湛子(きょうこ)女王がこの場所で好んで聞いておられた「アイーダ」と「カルメン」にちなんで。
広間からは朝香宮家の人々のプライベートルームへ繋がっています。
"I" INVITED INSIDE A FOUNTAIN 噴水(ふんすい)に憩う 殿下居間
殿下居間(でんかいま)の壁紙とカーテンのデザインは抽象化された噴水だそう。宮内省内匠寮が手掛けたラジエーターレジスターの噴水のデザインはより具象的で、対比が面白いです。
噴水はアール・デコの代表的なモチーフだそうです。
キーワードは"I" INVITED INSIDE A FOUNTAIN 噴水に憩う。
"N" NOBUKO, PRINCE ASAKA'S PRINCESS 允子(のぶこ)妃殿下
キーワードは"N" NOBUKO, PRINCE ASAKA'S PRINCESS 允子(のぶこ)妃殿下。
旧朝香宮邸の建設には允子妃殿下のセンスが随所に生かされているとうです。パリから帰国後、新邸の建設のためフランスのデザイナーと直接やり取りをされたとか。
パリで水彩画を、帰国後も油画を習っていた允子妃殿下。妃殿下寝室(ひでんかしんしつ)のラジエーターレジスターの花と格子のデザインは、允子妃殿下が描いた下絵をもとにしたものだそうです。
″X″謎 書庫
2階のプライベートスペースにある天井まで届く書棚。本や書類の保管のために作られた書庫です。
実は、旧朝香宮邸には謎が残る箇所がいくつも存在するとか。不思議な形をした壁の穴、鍵がなく開かない扉。
この書庫にも開かずの戸棚があるそうです…。
特別公開ウインターガーデン "D" DEEP ATTACHMENTS AND GOOD EYES 愛着と目利き
市松模様のモダンな内装が洒落た雰囲気のウインターガーデン。本展期間中は特別公開されます。
旧朝香宮邸の最上階にあり、明るい日差しがいっぱいに降り注ぐ温かな室内は植物を育てるにはとてもよい環境。
殿下と妃殿下もお二人でお好きな花を愛でていたかもしれません。
旧朝香宮邸を読み解く A to Zの見取り図
新館ギャラリー1には、床一面のに旧朝香宮邸の見取り図と、部屋ごとに使われた室内装飾の素材が展示されていました。
各部屋で集めた「A to Z」のカードを綴じるスペースもあります。
謎が残る旧朝香宮邸の魅力
東京都庭園美術館、開館40周年記念「旧朝香宮邸を読み解く A to Z」は 5月12日(日)まで。
まだ謎が残る旧朝香宮邸は、興味の尽きない魅力的な建物です。
本展では、2人のゲストアーティスト、伊藤公象、須田悦弘による現代アート作品も展示。旧朝香宮邸をさらに読み解く手がかりになるかもしれません。
庭園に春の訪れを感じる旧朝香宮邸、東京都庭園美術館へ是非お出かけください。
ミュージアムショップ
ミュージアムショップではフランス・パリ発のジャムブランド、コンフィチュール・パリジェンヌのユニーク フランボワーズ(1‚350円)、モリス A4クリアファイル いちご泥棒(440円)を購入。
ジャムは木苺の甘酸っぱい味と香り。
café TEIEN(カフェ庭園)
café TEIEN(カフェ庭園)では展覧会にちなんだ旧朝香宮邸を読み解く A to Z企画展カフェデザート、ホワイトチョコレートと木苺のオペラ仕立て(900円)をいただきました。
波型のキャラメルクリームは妃殿下寝室の照明のシェードを、白と黒のチョコレートは市松模様の内装がモダンなウインターガーデンをイメージしているそうです。
※企画展コラボレーションケーキはドリンクセット対象外になります。季節によりトッピングフルーツが変更になります。
老舗チーズ専門店フェルミエ白金台店オープン!
東京都庭園美術館正門を入って左側に老舗チーズ専門店フェルミエ白金台店が今年の1月にオープンしました。店内はチーズの店頭販売の他に、カフェスペースもあり、チーズにちなんだイベントも開催されます。
チーズは、ハート形のクール ド ブルゴーニュを購入。コクがありながらスッと溶けてしまうなめらかさ。
〇東京都庭園美術館
URL:https://www.teien-art-museum.ne.jp/
住所:〒108-0071 東京都港区白金台5-21-9
ハローダイヤル:050-5541-8600
開館時間:10:00–18:00(入館は閉館の30分前まで)
休館日:毎週月曜日(祝日の場合は開館、翌日休館)、年末年始
※ただし4月29日・5月6日は開館、4月30日(火)・5月7日(火)は休館
・交通:JR山手線「目黒駅」東口/東急目黒線「目黒駅」正面口より徒歩7分
都営三田線・東京メトロ南北線「白金台駅」1番出口より徒歩6分
※白金台駅のエレベーターは2番出口
〇開館40周年記念「旧朝香宮邸を読み解く A to Z」
会期:2024年2月17日(土)~5月12日(日)
観覧料
*オンラインによる日時指定制
一般 1,400円(1,120円)、大学生(専修・各種専門学校含む) 1,120円(890円)、中学生・高校生 700円(560円)、65歳以上 700円(560円)
*( )内は団体料金。団体は20名以上(事前申請が必要)
*小学生以下および都内在住在学の中学生は無料
*身体障害者手帳・愛の手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳・被爆者健康手帳をお持ちの方とその介護者2名は無料(手帳の提示をお願いします)
*教育活動として教師が引率する都内の小・中・高校生および教師は無料(事前申請が必要)
*第3水曜日の「シルバーデー」は65歳以上の方は無料です。
※展覧会のチケットをお持ちの方は、庭園にもご入場いただけます。
〇café TEIEN(カフェ庭園)
営業時間:10:00~18:00(入館は17:30まで)
定休日:毎週月曜日
※美術館営業時間に準ずる
お問い合わせ先:03-6721-9668
〇チーズの専門店「フェルミエ白金台店」
住所:〒108-0071 東京都港区白金台5-21-9(東京都庭園美術館敷地内)
TEL:050-1741-6154
営業時間:10:00–18:00
定休日:月曜日