2次避難先転々 珠洲の50人 富山から白山、小松へ

2次避難先である富山市内のホテルで過ごす珠洲市の住民。14日に50人が白山、小松市に移る=3月31日

  ●水、家なく戻れず にじむ疲れ「我慢するしか」

 能登半島地震後、富山市内のホテルで避難生活を送る珠洲市の50人が14日、白山市や小松市の旅館などに移る。受け入れ期限が13日までとなっているためだが、50人の大半は断水が続く大谷地区の被災者で、水も家もないため地元へ戻ろうにも戻れない。「しばらくは我慢するしかない」。避難先を転々とせざるを得ない状況に、住民には疲れの色がにじむ。

 白山、小松に移るのは珠洲市大谷地区の約40人と宝(ほう)立(りゅう)地区の約10人。石川県によると、2次避難先から別の2次避難先への移動規模としては最大となる。白山市一里野温泉の7施設が45人、小松市粟津温泉の2施設が5人を受け入れる。

 珠洲市の住民は1月下旬、立山山麓にある富山市のホテルテトラリゾート立山国際に2次避難した。当初は約120人が身を寄せたが、徐々に人数が減り、今月8日時点で68人となった。白山、小松へ行かない18人は自宅に戻ったり、親戚宅などに移ったりする。

 富山県では15日、立山黒部アルペンルートの全線開通が予定されており、観光客の入り込み増が予想される。同ホテルは全線開通後も被災者を優先して受け入れる方針だったが、避難所運営に当たる自治体職員の負担なども考慮し、石川、富山両県と富山市が受け入れ期限を今月13日までと決めた。

 「みんなでふるさとに戻りたいが、今の状況では暮らしていけない」。新たな避難先に向かうことを決めた大兼政康秀さん(60)=馬緤(まつなぎ)町=はこう話す。

 珠洲市内では中心部で上下水道が徐々に復旧しているものの、外浦に位置する大谷地区の断水解消は早くても5月下旬の見込みで、仮設住宅の整備も進んでいない。「しばらくは2次避難先のお世話になるほかない」。大兼政さんは言い聞かせるように語った。

 小池文一さん(76)=長橋町=はホテルテトラリゾート立山国際のきめ細かなサービスに感謝し「ずっとこのホテルにおれたら良かった」と残念がった。

  ●避難者半数「自宅戻る」 2月以降の行き先調査

 石川県が、8日までに県内外のホテルや旅館など2次避難先を退所した人を対象に行った聞き取り調査によると、回答した3086人のうち48%に当たる1495人が「自宅に戻る」、6.5%の203人が「仮設住宅に入る」と答えた。2月以降に2次避難所を出た人に行き先を聞いた。

 8日時点の2次避難者は2603人となっており、「顔見知りがいる地元に早く戻りたい」との声が多く聞かれる。県は8月中に必要とされる仮設住宅をほぼ完成させる方針だ。

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