〝曙を鍛えた男〟元琴錦の朝日山親方が断言「貴乃花と五分。今の時代なら大横綱だった」

貴乃花(左)と数々の名勝負を繰り広げた曙さん(1991年)

〝曙を鍛えた男〟も、その早すぎる死を惜しんだ。大相撲の朝日山親方(55=元関脇琴錦)は「若貴時代」に活躍。速攻を武器に2度の優勝を果たし「F1相撲」と称された。心不全で死去した元横綱の曙太郎さん(享年54)より1歳年上で、4年早く入門。幕内での対戦は40回(10勝30敗、不戦を除く)に及んだ。

朝日山親方は「(入門時の曙さんは)背が高くて、ひょろっとしていてね。序の口の時からウチの佐渡ヶ嶽部屋に、ずっと稽古に来ていた。当時は自分が十両に上がったばかりで毎日毎日、彼と稽古をしていた。あまり大声では言えないけど、私が育てたようなものだなという思いがあった(笑い)」と振り返る。

「(曙さんが)序の口ぐらいは何とかなったんだけど、序二段、三段目と上がって体重もどんどん増えてくると『これはアッという間に抜かれてしまう』と感じた。伸びてくる突っ張りの威力がすごくて、横綱になった時には勝つのは難しいと思ったね。あの強かった貴乃花と五分の成績(21勝21敗)。時代が時代だったから優勝11回で終わったけど、今なら大横綱だった」と証言した。

角界を離れてプロレスラーとなった曙さんは、2016年4月に群馬・高崎巡業をサプライズ訪問した。会話を交わす機会はなかったものの「お互いに目と目が合って、頭を下げてきた」。その後に元横綱は闘病生活に入った。「若乃花(花田虎上氏)から『お見舞いに行きました』とか『反応はありましたよ』とか話は聞いていた。元気になってもらえればと思っていたけど…。本当に残念で寂しい」。戦友を失った朝日山親方は唇をかんだ。

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