W杯優勝フランス代表が活躍「マルセイユ戦」後のボルドーで【サッカーと酒の切っても切れない関係】の巻(1)

京都の石清水八幡宮に並ぶ菰樽。右下には近くの山崎蒸留所のウイスキー樽も! 提供/後藤健生

蹴球放浪家・後藤健生のフィールドワークは、サッカーだけにとどまらない。世界各地の食も、大事な取材の一部だ。そして、食の重要な部分を占めるのが、のどを潤す酒である。サッカーと酒の知られざる関係とは――。

■サッカー大国は「どこも酒飲み天国である」

アルゼンチン、フランス、ポルトガル、スペイン、イタリア、クロアチア……。FIFAランキング(男子)の上位国ですが、ベルギーとか、ブラジルとかが抜けていますよね。これは、つまりFIFAランキング上位国にして、同時に有名なワインの産地である国を並べたもの。つまり、ランキング上位10か国のうち、6か国はワインで有名な国であるということです。ちなみに、やはりワインで有名なドイツは、FIFAランキングを16位まで下げてしまっています。

3位のベルギーや4位のイングランド、7位のオランダには美味しいビールがありますし、5位のブラジルにはサトウキビから造られた「カシャッサ」とか「ピンガ」と呼ばれる蒸留酒がありますね。

要するに「サッカー大国はどこも酒飲み天国である」ということを言いたかったわけです。「だから、ワールドカップをアルコールが飲めない国で開催するのは、サッカーの伝統を逸脱しているのではないか」という話もありますが、それは措いておいて、今回は“酒どころ”に行ったときの思い出を語りたいと思います。

■南ヨーロッパは「楽しいことがいっぱい」

イスラム教がアルコールを禁止していることは有名ですが、他の宗教でも飲酒は好まれないことが多いようです。大酒のみの和尚もたくさん知っていますが、仏教でも本来は飲酒は好ましいこととではないようで、禅寺などには「葷酒山門に入るを許さず」と書いてあります(「葷(くん)」とはネギやニラ、ニンニクのような匂いの強い野菜のことです)。

ただ、日本の神道では「御神酒(おみき)」という言葉があるように、酒は禁止されていません。神社に行くと、境内には奉納された菰樽(こもだる)に入った日本酒が積み上げられています。

キリスト教では、パンがキリストの体、ワインはキリストの血と考えられていて、礼拝儀式のときに欠かすことができません。

そのため、各地の修道院でワインが生産されてきました。修道院が発祥という“酒どころ”も多いようです。

それでも、労働を貴ぶプロテスタント(新教)では過度な飲酒は戒められていますが、ラテン系のカトリックでは、人々が楽しむことを神は喜ぶと考えられているので、酔っぱらうことや遊ぶことは悪いことではありません。

ワイン、音楽、娯楽、恋、フットボール……と楽しいことがいっぱいの南ヨーロッパ。「素晴らしきかな、ラテンの文化!」というわけです。

■フランス代表選手が活躍「ボルドーの夜に…」

従って、サッカーを追いかけて世界を放浪していると、たびたび“酒どころ”に迷い込んでしまうことがあるのです。

たとえば、フランスのボルドー。

1999年に『サッカー批評』創刊号の取材でフランスに行ったとき、ボルドーにも立ち寄り、ジロンダン・ド・ボルドー対オランピーク・マルセイユという好カードを観戦しました(このシーズン、優勝はボルドー、2位がマルセイユでした)。

試合はボルドーが前半のうちに4点を取って4対1で圧勝。前年のワールドカップで優勝したフランス代表選手たちが大活躍し、ボルドーではシルヴァン・ヴィルトールが2得点、ジョアン・ミクーが1得点を決めましたし、マルセイユが一矢を報いたゴールは、クリストフ・デュガリーが決めたものでした。

試合開始は20時35分でしたから、試合が終わるともう深夜です。

しかし、夜中でも美味しい料理を食べることができ、美味しいワインを飲めるところがラテン系諸国のいいところです。試合が終わって、さっそく編集の半田氏とともに港に近い有名なレストランに繰り出したというわけです。

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