大谷翔平の後払い契約、カリフォルニア州議会議員の標的に!「州税回避を防ぐため、繰り延べに上限を設ける法案を米国議会に提出した」

大谷翔平はロサンゼルス・ドジャースと10年7億ドル(約1015億円)で契約した。今後10年間に受け取る年俸は、年平均の7000万ドル(約101億円)ではなく、わずか200万ドル(約2億9000万円)。残りの年平均6800万ドル×10年分(計6億8000万ドル=約986億円)は、契約が切れる2034年以降に順次受け取る内容となっている。

こうした契約内容は、ぜいたく税対策にも効果を発揮(ぜいたく税計算上の大谷の年俸は4600万ドル=約67億円)。ドジャースの財政に柔軟性をもたらし、オフシーズンのさらなる補強を可能とした。

しかし、この契約内容にカルフォルニア州から不満の声が挙がった。ドジャースとの契約満了後に大谷が日本に帰国したり、別の州に転居した場合、カリフォルニア州は後払いとなる6億8000万ドル分の税金――推定9800万ドル(約142億円)と試算されている――を徴収できない可能性があるからだ。

24年1月には、カリフォルニア州会計監査官のマリア・コーエン氏が「税制構造に重大な不均衡が生じている」として、「この不均衡を是正するために即時かつ断固とした行動を求める」と、後払い分の税金も徴収できるよう議会に法改正を求める声明を発表していた。

これを受けてドジャース・ファンからは、サンフランシスコ出身でジャイアンツ・ファンのコーエン氏に対して非難の声が挙がった。大谷はオフシーズンにジャイアンツからも熱心に声を掛けられたが、最終的にドジャースに移籍。コーエン氏は、この大谷の選択が気に入らなかったのではないかと、ドジャース・ファンはいぶかしんだ。

そんななか、州の税制に関して新たな動きがあった。米メディア『The Athletic』は4月11日、「カリフォルニア州議会議員が、大谷翔平に関する税金の抜け穴をふさぎにかかった」と報じた。
「ジョシュ・ベッカー州上院議員が10日、州税回避を防ぐため、繰り延べに合理的な上限を設けるよう求める法案を米国議会に提出。歳入税委員会の採決を6対1で可決した。コーエン氏がバックアップしたこの決議案の次のステップは、数週間以内に州上院議場での議論と採決となる」

ベッカー氏は同メディアの取材に対して、「結局のところ、これは公平性の問題だ」と語り、「これは稼いだ収入であり、退職所得ではない。カリフォルニアで得た収入なのだから、ここで課税されるべきだ。この手法は連邦税法が意図しているところではない。いうなれば大規模なトリックだ」と続けた。

カリフォルニア州税は13.3パーセントで、全米で最も高い数値となっている。州が懸念しているのは、大谷の後払い契約が他業種の先例になる可能性があるからだという。シリコンバレーの膨大なテクノロジー産業が含まれるサンタクララ郡とサンマテオ郡の一部をカバーするベッカー氏は、「アスリートにとっては確かに先例だが、他業種の経営幹部が利用することもできるだろう」とも語った。

「州は連邦税法を変更することはできないが、今回の決議によって、この問題への意識が高まり、州が繰り延べ税金に求める創造的な方法について、議論を促すことを期待している。議会は状況を是正することができる。カリフォルニアで稼いだ報酬は、カリフォルニアで課税されるべきだ」

大谷がドジャースと契約している今後10年で、カリフォルニア州の税制ははたして変わるのだろうか。ドジャースとの前代未聞の大型契約が、政治の世界にも大きな影響を与えている。

構成●THE DIGEST編集部

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