「採用のプロ」で人手不足解消へ 中国地方の中小企業で雇用の動き ノウハウ吸収、社内で育成も

オンラインでプロ採用人材の坂根さんに相談する松岡課長

 地場の中小企業で、採用活動の知識や経験が豊富な外部の「プロフェッショナル人材」を非常勤で雇う動きが広がってきた。プロ人材のアドバイスを基に求人情報の発信を工夫し、採用数が急増した企業も出ている。人手不足の解消に向けて人材の確保につなげるだけでなく、ノウハウを吸収して社内の採用担当者を育てる狙いもある。

 メッキ加工のワイエスデー(東広島市)は昨年7月、採用コンサル会社スケッチ(横浜市)の坂根旭執行役員を1年契約で雇った。作業員の確保に苦労していたからだ。求人サイトを通じた応募は2年間でわずか2人だったが、坂根さんの助言を受け半年で22人に急増。30代を中心に12人を採用した。松岡由美総務課長は「悲鳴を上げるほど忙しかった」と喜ぶ。

 オンラインでワイエスデーの相談に応じた坂根さん。従業員への聞き取りを重ね、会社の強みを分析した。求人サイトでは、残業を求める際に家庭の事情などを考慮する点を強調。一人一人の従業員としっかり向き合う企業だとアピールした。募集職種の「めっき工」は検索ワードに使われやすい「メッキ工」に変えるなど、細かな点にも配慮した。

 坂根さんは「求職者から見ると中小企業の知名度は大差ない。自社の強みを把握し、確実に広報することが成否の鍵を握る」と説明する。

 人材コンサルのひろぎんヒューマンリソース(広島市南区)が2022年10月~24年3月にプロ人材を地場企業に紹介して成約した32件のうち、採用関係は14件と最多だった。

 中小企業は採用担当者が他の業務を兼ねていることが多く、大手に比べてノウハウが乏しい。プロ人材の契約期間は1年程度と短くコストもかかるが、その間に社内で採用活動を担う人材を育成もする。

 ひろぎんヒューマンリソース人材紹介事業部の稲野裕介部長は「プロ人材が契約している期間だけ採用がうまくいっても意味がない。自社の魅力の分析や発信の仕方をプロ人材から学んでみるのもいい」と提案する。

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