美術館核に交流拠点 哲文化創造財団 旧銀行支店を改修 水戸・泉町 茨城

改修して美術館を核とする複合施設となる旧三菱UFJ銀行水戸支店=水戸市泉町

茨城県水戸市の中心市街地に新たな交流の場を創出しようと、哲文化創造一般財団法人(福田三千男理事長)は11日、同市泉町3丁目の旧三菱UFJ銀行水戸支店の建物を改修し、美術館を核とする複合施設「テツ・アートプラザ」を開設すると発表した。茨城県出身の横山大観の作品を展示するほか、カフェやコミュニティースペースを備え、2025年秋のオープンを目指す。

同財団は21年4月、複合施設の整備や管理運営などの事業を行うため設立。発表によると、複合施設は旧銀行をコミュニティースペースに改修し、西側に美術館、東側にカフェをそれぞれ新設。地上3階鉄筋コンクリート建てで、延べ床面積は約2000平方メートル。

美術館は工芸部門と絵画部門に分けられ、ドイツ語で泉を意味する「クヴェレ」を用いた「クヴェレミュージアムMITO」と名付けられた。

工芸部門は、吉田石油(水戸市)前会長の故吉田光男氏のコレクションから、シルクロード地域の国々や中国、韓国の工芸品を含めた383点を収蔵する。

絵画部門では、茨城県出身の大観や中村彝(つね)の作品など、福田理事長が収集した近代日本画の名品を中心に226点をそろえる。

改修工事が進む銀行建物は1909(明治42)年、前身の旧川崎銀行水戸支店として完工。東京国立博物館表慶館などを手がけた新家孝正が設計した。外観はルネサンス様式を模した石造りで、アーチ状の縦長窓を採用するなど、当時の銀行建築らしい重厚な印象を漂わせる。2019年まで三菱UFJ銀行水戸支店として使用された。

カジュアル衣料販売のアダストリア会長を務める福田理事長は、昭和30年代の風景を回想しながら「銀行建物は街のシンボルだった」と述べた。複合施設については「優れた美術品を展示しながら、若者たちが気軽に集う場所になればいい」と話した。

■歴史的建物、活性化担う

旧三菱UFJ銀行水戸支店(茨城県水戸市泉町3丁目)は本格的な洋風建築。1945年8月の水戸空襲では、焼け野原となった市街地で建物の外壁が残り、歴史的な存在として保存を求める声が上がっていた。美術館を柱とした複合施設のオープンについて、市民や周辺の店舗関係者からは「市街地のにぎわい創出を」とまちの活性化を期待する声が上がった。

複合施設の近くで47年間にわたり飲食店を経営する忠文夫さん(66)は「建物は戦火を生き残った『水戸の宝』と言える。オープン後にはイベントも開かれるはずなので、多くの人に参加してほしい」と期待を寄せた。

国道50号を挟んだ反対側で、画材店を営む滝田淳一さんは「昨年に工事が始まってから興味を持って立ち止まる人が増えたように思う。中心市街地がにぎやかになればうれしい」と話した。

同市新荘の無職、川村和夫さん(86)は「取り壊されてマンションなどになるのは寂しいと思っていた」。複合施設の誕生を歓迎し「街の文化レベルを上げる役割を担ってほしい」と目を細めた。

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