【4月12日付社説】日米首脳会談/国際秩序の安定につなげよ

 日米の協力関係を、これまでにないほど混迷を深める国際社会の安定にどう役立てていくのかが問われている。

 岸田文雄首相とバイデン米大統領が米ワシントンのホワイトハウスで会談し、共同声明を発表した。岸田首相は記者会見で日米同盟に関し「今こそグローバルなパートナーとして真価を発揮すべき時だ」と強調した。

 今回の会談の狙いは、日米の緊密な連携を示し、覇権主義的な動きを強める中国をけん制することにある。自衛隊と在日米軍の連携強化に向けた指揮・統制枠組みの見直しの合意を発表したほか、中国の武力や威圧による一方的な現状変更の動きに対して、強く反対する立場を改めて確認した。

 共同声明には、尖閣諸島が米国の対日防衛義務を定めた日米安全保障条約第5条の適用対象と明記し、台湾海峡の平和の重要性についても言及した。

 日米が防衛力強化の具体策と併せて、中国による一方的な現状変更を許さない姿勢を改めて強調した意義は大きい。

 会談では、中台問題の平和的解決を促す方針で一致し、中国との対話を継続することを確認した。国内には日米の指揮系統を含めた連携の見直しが、平和国家としての在り方を揺るがすと懸念する声がある。対話を重視した平和主義は日本の根幹だ。対話を軸に据えながら、他国を脅かす形での勢力圏拡大の抑止につなげることが重要となる。

 共同声明はこのほか、日米間の投資拡大や半導体などの戦略物資の供給網構築、北朝鮮の日本人拉致問題解決への協力、再生可能エネルギーの普及を協力して促進することなどを確認した。日本は米国の動きや方針次第で、経済などが大きく左右される。共同声明に盛り込まれた内容を具体化することで、会談と声明を実のあるものとしていくことが大切だ。

 今回の会談は、両首脳とも政治的な基盤が盤石とはいえない状況で行われた。岸田氏には、政治資金パーティー券の裏金問題で低下した支持率の回復と党内掌握のきっかけとしたい思惑があっただろう。一方のバイデン氏も同盟国との強い協調を示すことで、秋の大統領選で、返り咲きを目指すトランプ前大統領との差別化を図りたいといった狙いが透けて見える。

 日米の強固な同盟関係は、東アジアの安定と国際協調の維持に不可欠だ。日米両政府には、政治動向に左右されることのない、強固な関係を持続、発展させていくことが求められる。

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