繰り下げ中も50万円ルールが適用されると聞きました。事実でしょうか?

年金制度にまつわることは、難しい用語が多くて、ますます不安になってしまう人もいるのではないでしょうか。今回は、年金の繰り下げ期間中も在職老齢年金制度の対象となるのかについて、専門家が解説します。

老後のお金や生活費が足りるのか不安ですよね。老後生活の収入の柱になるのが「老齢年金」ですが、年金制度にまつわることは、難しい用語が多くて、ますます不安になってしまう人もいるのではないでしょうか。そんな年金初心者の方の疑問に、専門家が回答します。 今回は、年金の繰り下げ期間中も在職老齢年金制度の対象となるのかについてです。

Q:繰り下げ中も50万円ルールが適用されると聞きました。事実でしょうか?

「1961年生まれ63歳男です。繰り下げ受給しようと思ってますが、繰り下げ中も50万円ルールが適用されると聞きました。事実でしょうか? もしそうなら65歳からの年金見込み額が180万円、個人年金保険が60万円あります。年金カットされないように働くなら、年収はどのくらい以下ならカットされないでしょうか?」(Sさん)

A:繰り下げ期間中の老齢厚生年金も在職老齢年金制度の対象になります

結論からいうと、繰り下げ期間中の老齢厚生年金も在職老齢年金制度の対象になります。繰り下げ受給すると、1カ月ごとに0.7%増額されますが、在職老齢年金制度で支給停止になった老齢厚生年金は増額されません。 そもそも在職老齢年金制度とは、60歳以上の人が、老齢厚生年金をもらいながら、厚生年金に加入して働く場合、老齢厚生年金の報酬比例部分の月額(基本月額)と、総報酬月額相当額(給与の他、残業代や通勤手当や住宅手当などの各種手当、ボーナスの1/12)を足した金額が、基準額の50万円を超えると、老齢厚生年金の一部または全額支給停止になるという制度です。 在職老齢年金の基準額50万円の計算に含まれるのは、厚生年金に加入して働いて得た収入です。個人年金保険の満期金は含まれません。 つまり、65歳で年金を受け取らずに繰り下げし、厚生年金に加入して働いていた得た収入は在職老齢年金制度の対象になります。 では、相談者が老齢厚生年金の基本月額15万円(180万円÷12カ月)を受け取った場合、在職老齢年金制度により年金カットされない年収を計算してみます。 ・支給停止基準額50万円-老齢厚生年金の基本月額15万円=35万円 したがって、年収420万円(月額35万円)を超えなければ年金はカットされません。 在職老齢年金制度で支給停止の影響を受けるのは「老齢厚生年金のみ」なので、老齢基礎年金が支給停止になることはありません。 監修・文/深川 弘恵(ファイナンシャルプランナー) 都市銀行や保険会社、保険代理店での業務経験を通じて、CFP、証券外務員の資格を取得。相談業務やマネーセミナーの講師、資格本の編集等に従事。日本FP協会の埼玉支部においてFP活動を行っている。 (文:All About 編集部)

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