憧れだった「京都の大学生」役で新境地 22歳女優が演じる「私とは正反対な性格」のヒロイン

滋賀県出身の八木にとって、京都や関西は身近な土地だ【写真:舛元清香】

12日開幕の舞台『鴨川ホルモー、ワンスモア』でヒロイン役

俳優の八木莉可子(22)が、今月12日開幕の舞台『鴨川ホルモー、ワンスモア』に出演する。八木にとって初舞台の同作は、生まれ育った滋賀県の隣、京都で繰り広げられる大学生の物語。ドラマ、CMで注目の22歳に作品のこと、新境地に入る思いを聞いた。(取材・文=大宮高史)

『鴨川ホルモー』は、直木賞作家の万城目学氏による青春ファンタジー小説で、『ホルモー』とは、式神のようなオニを使って戦う架空の競技のこと。京都を舞台に、ひそかに伝えられてきたホルモーに興じる学生たちの青春を生き生きと描き、09年には映画化と舞台化がされた。そして、15年ぶりにメディアミックスされる。

滋賀県出身の八木にとっては、京都は身近で憧れの街でもあった。

「作品に出てくる地名がなじみのあるところばかりで、鴨川にも子どもの頃から遊びに行っていました。京大、同志社、立命館と小説に登場するどの大学にも友達が通っていて、その子たちの日常も聞いていると、お芝居なのにお芝居でないような感覚になりそうです。私は東京の大学に進学しましたが、関西の大学生が学年を『回生』と言うので、私も地元に帰るとそういった言葉遣いに染まります」

京大卒の万城目氏が原作を書き上げただけあって、京都に暮らす学生の日常もリアルに描かれている。八木はそれがうれしく、口元を緩めて言った。

「京都の学生という存在自体にすごく憧れていました。鴨川の『カップル等間隔の法則』も、もちろん知っていました。しかも、『フレスコ』に『リカーマウンテン』と、京都ではそこらじゅうにあるお店の名前まで登場します。なじみがありすぎてクスッと笑ってしまいました。舞台は大阪でも公演しますので、関西にお住まいの皆さんなら、小ネタにたくさん笑っていただけると思います」

八木が演じる早良京子は、東北出身で京大教育学部に通う学生。主人公で同じ京大生の安倍(中川大輔)に思いを寄せられるヒロインの設定で、稽古前は「あざといところがある女の子」というイメージを持っていたという。

「以前はあざとい役を演じるのに苦手意識がありました。でも、より研究をして『誰に対しても明るく優しいムードメーカーだけど、色恋が絡むと行動が突飛になってしまう子』だなと考えました。私とは正反対の性格をしているので、演出の上田誠さんと場面ごとに細かくすり合わせて、京子の魅力を出しています」

演出の上田氏が主宰するコメディー劇団「ヨーロッパ企画」の公演も客席から見てきたため、同氏も頼もしい存在だ。

「ずっとコメディーに挑戦してみたくて、ヨーロッパ企画さんの舞台も大好きです。舞台のコメディーって、お笑いや日常の会話とはまた違う、独特の空気感や話術があるなと思っています。その感覚をつかむことも、この舞台経験で私が達成したいことです」

オニを使役するための、叫び声のような呪文「オニ語」も劇場で再現する。

「たくさんあって使いこなすのに苦戦しましたが、意味は日常でも使う言葉と変わらないものが多いんです。なので、稽古時間外でも演者同士で使っているうちに覚えてしまいます。『みんな静かにして』なら『げっぺ、げっぺ』のように(笑)、ゲーム感覚で使っています」

コメディーは「挑戦してみたいジャンルでした」と抱負を明かした【写真:舛元清香】

CMオーディションに合格し、14歳で芸能界に

そんな八木の歩みを知りたく、故郷での日々を聞くと「自然も豊かで、家族に甘えることもできて、あくせくとは無縁の牧歌的な毎日でした」と振り返った。オーディションでグランプリを受賞し、14歳で芸能界入り。翌年には『ポカリスエット』CMに抜てきされ、爽やかな制服姿を印象付けた。

「大学でも中学高校でも、学校という空間が好きなんです。ポカリスエットのCMのオーディションではダンスの審査もあったのですが、合格後も撮影に向けて2か月間、みっちりと特訓を受けました。100人以上の制服を着たダンサーの方と一緒に撮ったので部活のような経験でした。『鴨川ホルモー』カンパニーの一体感で、その頃のことも思い出しています」

20年4月に大学進学。芸能活動と並行して、4年間の課程を今春に修了して卒業した。

「仕事との両立は簡単ではなく、責任の重さも高校生までとは段違いに感じました。ただ、進学して勉学だけでなく、想像もしなかった価値観や教養を知れたことも人生に必要な経験でしたし、ホルモーのように、はたから見ると他愛のないことでも盛り上がれた学生らしい時間もいとおしかったです。まだちょっとだけ、舞台でキャンパスライフを過ごせそうです」

青春が似合う爽やかさは、デビュー時から変わっていない。だが、9年間で大きく飛躍。今度は物語を楽しみながら、舞台で観客を引き込んでいく。

□八木莉可子(やぎ・りかこ) 2001年7月7日、滋賀県生まれ。15年のデビュー直後、ポカリスエットのCMに出演し話題を呼ぶ。俳優としてNetflixオリジナルドラマ『First Love 初恋』や、ヒロインを務めたNHK総合『おとなりに銀河』などに出演。23年10月からは、日本テレビ系『アナザースカイ』のMCを務めている。特技は書道(初等師範)170センチ。血液型A。大宮高史

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