PETボトルリサイクル国内市場に関する調査を実施(2023年)~2024年12月のBottle to Bottle用リサイクルPET樹脂の国内供給能力は43.7万tと予測、原料の使用済PETボトルの供給不足は継続しており、自販機横などから回収された使用済ボトルの外観品質にどこまでこだわるか、ブランドオーナーの覚悟が問われる~

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、環境対応素材の国内メーカー動向を調査し、製品セグメント別の動向、参入企業の動向、将来展望を明らかにした。
ここでは、日本国内におけるB to B用リサイクルPET樹脂(rPET)の供給能力の見通しについて、公表する。

1.市場概況

清涼飲料の主要ブランドオーナー(飲料メーカー)各社では、容器包装について独自の目標を掲げて環境に配慮した設計及び材料の採用を推進している。特に清涼飲料容器の主力であるPETボトルの脱化石由来原料化が課題となっており、各社でこれまで主に使用してきたバージンPET樹脂(vPET)からリサイクルPET樹脂(以下 rPET)やバイオマスPETへの原料切り替えに積極的に取り組んでいる。

PETボトルのサステナブル化(持続可能な事業の実現)には、使用済ボトルを原料に新たなPETボトルを製造するBottle to Bottle(以下 B to B)に代表されるリサイクル材料の使用と、植物由来材料の使用の2つの方向があるが、このうちバイオマスPETは一部で採用例も出てきているものの商業ベースでの実用化には至っていない状況である。ブランドオーナー各社とも、現状ではB to B用rPETを主体としてサステナブル化目標の実現に取り組んでいる。

2.注目トピック~2023年の国内B to B用rPET供給能力は2021年時点の2倍以上の規模まで拡大見込

ブランドオーナー(飲料メーカー)によるB to B用rPETの使用目標を実現するには、各社のPET樹脂使用量を満たすだけのrPETの供給が求められる。しかし、使用済ボトルを原料として新たなPETボトルを製造するには、飲料容器材料としての厳しい安全・衛生管理基準をクリアする必要がある他、樹脂のIV(Intrinsic Viscosity)値をブロー成型可能なレベルに戻すための重合設備・技術が不可欠である。

当初は、回収された使用済PETボトルから飲料容器として使用可能なレベルのrPETを製造できるリサイクラー(再資源化事業者やリサイクル樹脂メーカー)は限られており、2021年12月時点での国内におけるB to B用rPETの供給能力は15万t/年と、必要とされるrPET使用量の1/3程度に留まっていた。
しかしその後、B to Bに対する需要拡大に対応するため、既存のリサイクラーの能力増強に加えて新規リサイクラーが参入したことで、2022年末にはB to B用rPET供給能力は26万t/年まで拡大した。2023年に入るとリサイクラーの能力増強と新規参入はさらに活発化し、B to B用rPET供給能力は37.5万t/年(見込)と2021年時点の2倍以上の規模となった。
リサイクラーによる能力増強や新規参入は2024年に入ってからも続いており、現在予定されている増強ライン、新規ラインがすべて予定通りに立ち上がれば、2024年末のB to B用rPETの供給能力は43.7万t/年まで拡大すると予測する。

3.将来展望

B to B用rPETの供給能力が拡大を続ける一方で、B to B用rPETの原料となる使用済PETボトルをいかに確保し、リサイクルするかが重要となる。B to B原料として使用可能な、高品質な使用済PETボトルの回収量はリサイクラーが必要とする使用済PETボトルの量よりも少なく、原料不足は今後の問題となっている。

B to B用rPETの原料確保のためには、市町村で回収された使用済PETボトルだけでなく、自動販売機横の回収ボックスなどから回収されたPETボトル(事業系回収PETボトル)をいかに有効利用できるかが重要となってくる。
事業系回収PETボトルの異物や汚れはアルカリ洗浄や重合プロセスにより除去できたとしても、再生されたrPETにはわずかに着色が生じ、ブランドオーナー(飲料メーカー)の品質基準から外れてしまうことが多い。そのため、B to Bに回らなかった事業系回収PETボトルの多くはフレークに加工された後に海外へと輸出されているが、この分を国内の需要に回すことができれば、B to B用rPETの需給バランスの緩和にもつながることが考えられる。

事業系回収PETボトルをリサイクルしたrPETの外観品質は、バージンPET(vPET)や自治体系回収PETボトル由来のものよりも低いが、厚生労働省が定める「食品用器具及び容器包装の製造等における安全性確保に関する指針(ガイドライン)」を満たす品質の樹脂として再生されたrPETであれば、飲料用PETボトル原料として使用することは可能である。海外では自販機横からの回収PETボトルから再生されたrPETによるB to Bは既に行われている。これを使うか否かは、ブランドオーナーのB to Bに対する覚悟にかかっていると言える。
2030年に使用済PETボトルの100%B to B化という目標を達成するには、外観性が良くないからという理由で安全性に問題のない樹脂を使わないということがどこまで許されるのかが問われる。もちろん、リサイクラーによる外観品質向上のための技術開発は引き続き求められるだろうが、過剰なまでの外観品質要求は見直されるべき時期に来ていると考える。

© 矢野経済研究所