壱岐市長選、終盤戦に突入 過去最多の4候補激戦 高い島民の関心 鍵握る浮動票

16年ぶりにリーダーが交代する壱岐市長選。市長の椅子を巡り、4候補が激しい論戦を繰り広げている=壱岐市役所

 現職の退任で16年ぶりにリーダーが交代する長崎県の壱岐市長選は14日の投票に向け、終盤戦に突入した。いずれも無所属新人で、元市職員の篠原一生候補(46)、元衆院議員秘書の坂本和久候補(59)、元市議の森俊介候補(39)、元市職員の出口威智郎候補(48)が出馬。4人の立候補は過去最多で島民の関心は高い。各陣営は投票先を決めていない浮動票が勝負の鍵を握るとみて、取り込みに躍起になっている。
 7日の告示後、4候補は島内全域を奔走して支持を訴えている。同時に始まった市議補選(被選挙数2)は5人が出馬。選挙カーがひっきりなしに各地区を出入りし、決戦のムードを高めている。
 現職と新人の一騎打ちとなった前回市長選は、新型コロナウイルス禍で選挙運動を自粛。投票率は過去最低の67.07%に落ち込んだ。今回は制約がなく、大方が「上がる」とみる。
 市選管によると、11日までの期日前投票数は3004人。前回の1.2倍のペースで推移し、関心の高さが数字に表れている。
 各陣営は浮動票を見据えた動きを強めている。
 篠原候補は交流サイト(SNS)の発信を強化。市職員時代から親交がある田上富久前長崎市長が応援する動画を紹介するなど幅広い層にアピールする。
 出口候補もSNSを頻繁に更新して認知度を高める戦略を取る。保守系の元壱岐市議会議長や同市区の県議補選に出馬した社会福祉法人理事長らが後押しする。
 森候補は前回、自民・公明両党の推薦を受けた現職と対決し、無党派層の支持を得て接戦に持ち込んだ。今回も終盤に街頭演説を増やして浸透を図る。
 坂本候補は草の根の活動に注力。出陣式には有力な建設会社会長や漁協組合長らが駆け付けた。地元の芦辺町などを中心に票の上積みを狙う。
 自民関係者は、政治資金パーティーを巡る裏金事件の影響を意識してか、政党色を消して行動。国政選挙で集票力を発揮する農業団体も様子見を続けている。
 前回の有効投票数は約1万4400票。現職はこのうち、約7400票を集めて逃げ切った。
 4陣営が予想する勝敗のボーダーラインは最も低い設定で4500票。この場合、次点以下も4千票台に乗る大接戦となる可能性がある。一方、終盤に勢いを示し、有権者に「勝ち馬に乗る心理」が働けば特定候補に票が流れ込む可能性も。ある陣営は当落線は6千票まで上がるとみる。
 2004年の市制施行から3人目となる市長の座に就くのは誰か。混戦を抜け出そうと、各陣営は最終盤まで激しい票の争奪戦を続けそうだ。

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