吃音をプラスのイメージに 5月に長崎で当事者接客カフェ 諫早出身の学生も挑戦 「体験共有を」 

「吃音に対してもっとプラスのイメージを持ってもらえるよう自分の実体験を共有できたら」と話す辻さん=長崎新聞社

 話し言葉が滑らかに出ない発話障害の一つ、吃音(きつおん)の若者が接客スタッフを務める「注文に時間がかかるカフェ(注カフェ)」が5月5日、長崎県長崎市内で1日限定でオープンする。東京の当事者が発起人となって始めた期間限定のイベントで、全国各地に広がっている。スタッフに挑戦する諫早市出身の佐賀大2年、辻勇夢さん(19)は「吃音に対してもっとプラスのイメージを持ってもらえるよう自分の実体験を共有できたら」と心待ちにする。
 「意識するのは人前で話す時とか。幼い時から『なんで言葉が突っかかるんだろ』と思っていた」
 小学校に入学した辻さんが学級で自己紹介をした時だった。言葉に詰まり、教室内で笑いが起き、泣き出してしまった。その後、からかわれることは直接なかったが、周囲の目が気になり、ネガティブな気持ちを抱えながら学校に通った。
 転機となったのは高校進学。入学直後に部活動の同級生に初めて吃音のことを打ち明けた。「俺は味方やから」「大丈夫よ」。先輩など周囲も理解してくれ、辻さん自身も個性として前向きに捉えられるようになった。
 携帯電話を持ったことも大きかった。交流サイト(SNS)で自分と同じ吃音の人が頑張る姿に触れ、社会人になってからの緊張する場面での対処法も知ることができた。そうした中、高校3年生の春、注カフェの存在を知った。

辻さんがお客さんとして参加した注カフェで接客するスタッフの女性(中央)ら=昨年8月、福岡市内(奥村さん提供)

 吃音当事者の奥村安莉沙さん(32)=東京都目黒区=が2021年に始めた取り組みで、高校生以上の学生が接客スタッフを務める。接客を通じて学生が自信をつけ、客として参加した人に吃音への理解を深めてもらうことで、社会参加を促進しようという試みだ。
 固定の店舗はなく、奥村さんがインターネットなどでスタッフを募集。クラウドファンディングで集まった資金を基に期間限定で開く。全国23の都道府県で開催され、本県では初めて。
 「大学生になったら体験したい」。そうした思いを抱いていた辻さんは大学進学後の昨年8月、福岡市内で開かれた注カフェに客として参加。同世代の若者が前向きに取り組む姿に感動を覚え、「生まれ育った長崎で開きたい」との思いを膨らませた。昨年12月、スタッフに応募。会場の提供先も決まり、スタッフとして参加する京都府在住の女子高生や奥村さんと準備を進める。
 辻さんは「吃音について理解してくれるという信頼感や安心感がある。緊張よりわくわくの方が大きい。楽しめたら」と笑顔で語った。
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 注カフェは5月5日午後2時から1時間ごとに計3回開き、定員は各回10人。参加無料だが、事前予約制で予約した人に会場名は伝える。開催約2週間前にホームページに情報を掲載し、先着順で受け付ける。スタッフも募集している。

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