長崎空港の24時間化 IR認定の前提崩れ、手探り続く <地方からの課題 衆院長崎3区補選・中>

昨年8月に実施した夜間の実証運航で東京から到着した機体=長崎空港

 午前5時20分に長崎空港(長崎県大村市)を飛び立ったチャーター便は、富士山周辺上空で日の出を迎えた。日本航空などが昨年12月に実施した遊覧ツアー。歓声を上げる乗客約70人を見て、日航の担当者は「時間外でなければこの景色は見られない」と手応えを口にした。
 国が管理する同空港の運用時間は午前7時~午後10時。許可を得た今回のツアーは、日航の長崎発便としては過去最も早い時間帯のフライトだった。単にイベントとしてだけではなく、「空港24時間化」に向けた実証実験の意味合いもあった。
 空港が活性化すれば地元大村市のみならず、県全体に経済効果をもたらす。その有効策として、県は市や経済団体などと推進協議会をつくり、24時間運用実現を目指している。大村湾に囲まれ、騒音の影響が比較的小さいという地の利を生かして、海外便の誘致につなげることで旅客増を当て込む。
 ただ、時間延長を国に申請し許可を得るには、早朝夜間の管制の態勢や定期便の見込みを確保するというハードルがある。
 県によると、2022年から、朝夜各45分間の管制業務を福岡空港の飛行援助センターが遠隔で担うことで態勢が前進。需要拡大を見据えて早朝・夜間便の実証運航も実施しており、県はさらに「弾力的な運用」を国に要望している。
 ところが昨年、これに水を差すような事態が生じた。
 県は、カジノを含む統合型リゾート施設(IR)をハウステンボス(佐世保市)に誘致する計画を進めてきた。その流れで、同空港への支援を政府に要望するに当たり「IR開業を見据えた需要に対応するため」と関連付けた。空港の年間利用者数について、IR開業後に475万人、開港以来過去最多だった18年度の約327万人を大きく上回ると試算した。
 結局、政府は県のIR計画を認定しなかった。大村市の園田裕史市長は今年3月の定例市議会一般質問で「不認定は非常に残念。空港活性化において、いろいろな影響が出るのは避けられない」と懸念。アジアに近い海上空港という利点は変わらないものの、IR認定を前提の一つとした方途は見直しを迫られている。
 自衛隊や海上保安庁の有事使用に備える「特定利用空港」にも指定された。これを受け市は、市民の安全が脅かされないような運用を国に求めている。来年で開港50周年。本県の浮沈を占う“玄関口”の在り方は今、手探りの状態だ。
=連載・下へ続く=

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