アングル:米利下げ開始と大統領選接近か、FRBが政治の矢面に立つ恐れも

Howard Schneider

[ワシントン 11日 ロイター] - 米国ではインフレの高止まりが鮮明となり、連邦準備理事会(FRB)の利下げ開始のタイミングがこれまでの想定より遅れ、大統領選が近づく時期と微妙に重なる恐れが出てきている。

10日に発表された3月の米消費者物価指数(CPI)前年比上昇率は3.5%と予想を上回り、FRBが目標とする2%に収まるにはまだ相当の時間がかかることが明らかになった。

これを受け、金利先物市場は最初の利下げ時期が9月17-18日の連邦公開市場委員会(FOMC)になる公算が最も大きいと見込んでいる。そうなると大統領選の投票日まであと7週間という局面のため、政治との距離を置くことに心を砕いてきたFRBが、白熱する選挙戦の渦中で否応なく注目を浴びる事態になるだろう。

民主党の現職大統領として再選を目指すバイデン氏は、選挙戦の終盤まで低インフレと低失業率が併存するソフトランディングが維持されるような政策運営をFRBに期待している。また共和党候補指名が確実なトランプ前大統領は、FRBが利下げに動けば、それはバイデン氏を手助けする目的だと早くもけん制球を投じている。

3月FOMC後に公表された政策金利見通しに基づくと、FRBが想定したのは年内3回の利下げで、投資家はこれに沿って最初の利下げを6月と見込んでいたが、3月CPIの上振れでそうしたシナリオが崩れてしまった。

足元では政策変更は当面あり得ないと発言するFRB当局者が増えてきている。

さらに有力なFRBウオッチャーの間からは、もはや大統領選前に利下げできないとの声まで聞かれ始めた。

3月CPI発表後にJPモルガン、バンク・オブ・アメリカ、ジェフリーズ、ドイツ銀行などの分析チームは大統領選までに複数回の利下げが行われるとしていた従来の見通しを白紙に戻し、一部は利下げ開始の予想を年末ないし来年に先送りしている。

バンク・オブ・アメリカは「FRBが12月まで利下げを始める上で必要な確信を得られるとは思わない」と述べた。

この通りならバイデン氏は選挙戦で、根強いインフレと高金利をもたらしているという非難に立ち向かわなければならない。

それでもバイデン氏は3月CPI発表後も「FRBがどう動くか確かなことは分からないが、年内に利下げがあるという私の予想は堅持する」と言い切った。

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