第10回 まだまだ続く宇宙の研究を次世代へ!

スペースシャトルとそれを運ぶ輸送機。NASAジョンソンスペースセンターに勤めていた時に撮影しました。

 1962年に米国大統領ケネディは「We choose to go to the Moon」と訴えました。それからアポロが月に行き、ボイジャーやカッシーニが土星や木星へ向かい、そしてスペースシャトルが国際宇宙ステーションと地球を何回も往復しました。そのスペースシャトルの写真を見た時から、私の夢は「宇宙に行って地球と太陽を見ること」です。夢を叶えるために、宇宙に関する勉強や仕事に携わってきました。2008年に宇宙飛行士の試験を受けましたが、結果は不合格でした。今でも、地球に戻れなくてもいいから、宇宙に行きたいという「夢」は捨てることができません。

 私がNASAで隕石や彗星のチリなどの地球外物質の研究をしているときに、日本では小惑星イトカワからサンプルを獲得しました。そして新たに小惑星から砂を持ち帰ろうというはやぶさ2プロジェクトが進み始めたのです。はやぶさ2で持ち帰る小惑星の砂を分析したいという強い気持ちに押され、2011年、NASAからJAMSTEC高知コア研究所にやってきました。仲間が徐々に増え、準備から分析、そして結果を出すまで、10年かかりました。長いようで、あっというまに月日が過ぎたことを実感しています。その間、みんなで最善を尽くしたので、チームの取り組みに全く後悔はありませんし、皆で出せた結果に誇りを持っています。一方、もっとこうすれば、こんな準備をしておけばよかったのではないかと、思い返すこともあります。今後の地球外物質の分析や研究につなげるためにも、うまくいったことを、そしてもっと大切なことは失敗したことを、みんなに伝えていくことが必要と感じています。

 もし私の「夢」が叶い、月などの有人探査にいくことになった場合、準備したいことが2つあります。1つは、自分で月まで持っていける分析装置を開発することです。今までにも多くの探査機には分析装置が乗っていましたが、人がその場所で取った岩などをすぐに分析したことはありません。それができると面白いですよね。

 2つ目は、次世代の研究者を育てることです。皆さんの周りに、宇宙を研究している人は、どのぐらいいるでしょうか?この一助となると考え、高知チームで一緒に研究していたイギリス・オープン大学の研究者グリーンウッド博士らとともに、日英の研究者を育てる二国間共同プロジェクトを始めました。2023年9月には、オープン大学、ダイヤモンド放射光施設、ロンドン自然史博物館で研究会や研修を開きました。英国全土から多くの研究者と学生ら40名くらいが参加しました。2024年4月には、高知県で日英国際ワークショップを行います。この取り組みを、様々な年代の研究者と学生が自由に議論をし、今後の惑星科学を皆で考える『スタート地点』にしたいと考えています。

 宇宙は、まだまだナゾがいっぱいです。このナゾを皆さんと一緒に解き明かす!そんな日が来るのを楽しみにしています。=おわり

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