長谷川滋利氏、負担増が懸念されるピッチクロック制度に私見「メンタル的にはいいこと」「今は取り分け厳しい」

MLBで導入されているピッチクロック【写真:Getty Images】

ABEMAがインタビュー実施、10日に初解説

ドジャース・大谷翔平投手らがプレーする米大リーグの試合を中継しているABEMAでは、今月10日に初解説を務めた元MLB投手の長谷川滋利氏にインタビューを実施。昨今話題となっているピッチクロックについても聞いている。ABEMAでは、山本由伸が先発予定となっている12日(日本時間13日)のドジャース―パドレス戦を無料生中継する予定。

大リーグでは投球間の時間制限「ピッチクロック」が2023年から導入され、走者なしで15秒以内、走者がいる場合は20秒以内に投球動作に入る必要があると規定されたが、MLBは今季から前年よりも2秒短い18秒以内に投球動作に入ることにするなどの新ルールを導入した。

これにMLB選手会は、選手の健康と安全に関して重大な懸念が生じているなどと声明を出している。好投手の故障が相次いでおり、今季は20年のサイ・ヤング賞右腕シェーン・ビーバー(ガーディアンズ)がトミー・ジョン手術を受けると発表されたほか、昨季20勝をマークしたスペンサー・ストライダー(ブレーブス)も右肘靱帯を損傷。昨季右ひじの手術を行っている大谷も9日に応じた取材で「間違いなく負担は増えている」などとピッチクロックの影響を語っている。

ピッチクロックについて、長谷川氏は「早く投げればいけないのは身体には負担がかかることですが、それだけがケガの理由ではもちろんないです。球速も速くなって投球の出力も上がっているし、色々な理由があります」と故障の理由は一つだけではないと指摘。さらに「ただ一方で、実はテンポよく投げることはメンタル的にはいいことなんですよ」とも語った。

その理由として「自分主導で始まるピッチャーはマウンド上でどうしても考えすぎてしまって、それで野球人生を終えてしまう人も多い。練習だったり、準備だったりマウンド上以外のところではじっくり野球を考えてやらないといけないけど、いざマウンドに上がった時は意識的に“無”になれることが大事。そういう投手が結果を残しやすいですよね」と、精神面においてはプラスに働くケースもあると説明した。

長谷川滋利氏【(C)ゲームプラン】

長谷川氏はピッチクロックの導入自体は「全体的に見ても、MLBのためにはすごく良いこと」と肯定的。試合時間の短縮を、米ファンも喜んでいると見ている。「ただ、選手の立場になってみたら、ここまで早くする必要あるの? とは思ってしまいますよね。去年ぐらいの秒数でも良かったのに、さらに今年に入って早くなったから」と選手側から懸念の声が上がることにも理解を示した。

「ただ、今は取り分け厳しく取り締まっていると思うんですよ。ルールが浸透していけばもうちょっと柔軟になると思う」と長谷川氏。「だって仮にワールドシリーズの最終戦がピッチクロック違反で試合終了になったら面白いですか?(笑) ピッチャーとバッターの真剣勝負が野球の面白いところなのに、それで終わっていいのかという。そうならないように今は取り分け厳しいんだと思います」と予測していた。

THE ANSWER編集部

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