長谷川博己主演『アンチヒーロー』飯田和孝プロデューサー「視聴者の方の予想よりひどいアンチヒーローかも…。正直ビビッてます」

By TV LIFE

長谷川博己が主演を務める日曜劇場『アンチヒーロー』(TBS系 4月14日(日)スタート 毎週日曜 午後9時~9時54分)。長谷川が演じる主人公は「殺人犯をも無罪にしてしまう」“アンチ”な弁護士。たとえ、犯罪者である証拠が100%そろっていても無罪を勝ち取る、ヒーローとは言いがたい限りなくダークで危険な人物だ。

「正義の反対は、本当に悪なのだろうか…?」という問いを視聴者に投げかけ、スピーディーな展開で常識が次々と覆されていく。日常のほんの小さなことがきっかけで正義と悪が入れ替わり、善人が悪人になってしまう。まさにバタフライエフェクトのような、逆転パラドックスエンターテインメントを描き出す。

主人公の法律事務所で働く同僚弁護士役で北村匠海と堀田真由、パラリーガル役で大島優子が出演。さらに、東京地方検察庁の検察官役に木村佳乃、検事正役に野村萬斎が決定している。

登場人物たちの役名やキャラクター、ストーリーの詳細が明かされておらず、謎の多い『アンチヒーロー』だが、初回放送を前にメディア向けの1話試写会が行われ、飯田和孝プロデューサーによるインタビューが行われた。


◆1話の完成を見た感想、達成感はいかがですか?

まず1話で入れ込みたかったこと、やりたかったことはやれたなと感じています。でも、手応えという意味ではまだ分からいないですね。実際に視聴者の方からどういう反応をいただけるか分からないし、正直ビビッてます(笑)。

長谷川博己さん演じる主人公がアンチな弁護士でいわゆるダークヒーローですが、たぶん皆さんの予想よりもよりひどいところに行っている気がしていて。恐らく皆さんは、違法スレスレの潜入をしたり…というやり方を想像されているかと思うんです。でも実際は人間の内部というか、人の弱みに付け込むようなところがあるので、それを受け入れていただけるかどうかというのが怖くもあり、興味があるという感じです。

◆『アンチヒーロー』というドラマを打ち出そうと思ったきっかけや、世の中にどんなことを伝えたいと思って制作したのでしょうか?

とにかく次から次へと見たくなるような、引き込まれるエンターテインメント作品を作るということをまずは念頭に置いて制作しています。『アンチヒーロー』を最初に企画したのは、2020年のコロナ禍が始まったころ。脚本の福田哲平さんと企画を作り始めて、最終的に脚本としてクレジットされている4人でストーリーを合作したという感じです。

今、時代が進むにつれていろんなことが起きていて。人を傷つけるのも簡単だし、得ていた評価や賞賛が一瞬にして崩れ落ちるっていうことが、昨今すごくあるんじゃないかと思っていて。ただその中で“本当に真実を見られているんだろうか?”と常々思っているんです。本当に自分の目や耳、肌、自分の感覚でしっかり物事を感じていかないと、それが引き金になって誰かを不幸にしてしまったりとか。はたまたそれが自分に返ってきたり…という世の中になっていると思うんです。だからこそ、しっかりと自分の感覚を大事にすることが必要なんじゃないかと、このドラマを通して少しでも感じていただけるとうれしいなと思います。

長谷川博己『アンチヒーロー』©TBS

◆長谷川博己さんの起用理由をお聞かせください。

長谷川さんについては、2020年の最初の企画書のイメージキャストに“長谷川博己”と書いていました。このドラマの主人公は、本当につかみどころのない人間で。何を考えているか分からないけれど、胸の中に芯のようなものをすごく持っているのかもしれないと感じさせる。人物として簡単に正体が分からないというところを一番重視していて、それを体現してくれる方として長谷川さんが真っ先に思い浮かびました。

2017年の『小さな巨人』というドラマに私もスタッフとして参加していて、その時の長谷川さんの印象として、すごく芯が強いんだけれども繊細で、いろんな面を持ち合わせている方だなと感じたんです。『小さな巨人』の期間だけでは全部をつかみ切れていないところがあって、そういった意味でもつかみどころのない方なんじゃないかと。もう一度お仕事したいなという気持ちと、このキャラクターに日本の俳優さんの中で一番合っているんじゃないかというのがオファーした一番の理由です。

北村匠海『アンチヒーロー』©TBS

◆同僚弁護士役の北村匠海さんについてはいかがでしょうか。

北村さんが演じる役柄は、すごく難しいキャラクターだと思っていて。弁護士になって年月は経っていないんだけれども、ド新人ではないんです。そういったある種、視聴者目線に近いキャラクターになってくる中で、そこをどう表現していくのかというときに、北村さんの表現力に注目してお願いしたいなと思いました。

すごく頭のいい俳優さんだなと思っていたのですが、実際にご一緒してみると頭はいいけれどそれだけで芝居をしていないというか。1話から10話まで台本がある中で“この段階でこのキャラクターはこういう変遷をしていく”という計算はあるんですけど、演じてみると計算っぽく見えない。すごく自然なたたずまいで演じているのが、北村さんの魅力だと思います。

◆同じく同僚弁護士役の堀田真由さんの起用理由は?

今回のような役をやらなさそうな人がいいなと思ったんですよね。堀田さんにはすごく柔らかい方だという印象があったので、こういった役をやってみたら面白いんじゃないかと思いました。このキャラクターについても今後いろいろなことが明かされていくので、そこにしっかりと向き合っていけるお芝居をされるんじゃないかなというイメージが堀田さんにあったのでオファーしました。

堀田真由『アンチヒーロー』©TBS

◆『VIVANT』や『不適切にもほどがある!』など、最近はドラマの考察がブームになっていますが、その辺りも意識しているのでしょうか?

『VIVANT』でウケたから、これもそうしようというのはないんです。『アンチヒーロー』の脚本は昨年の2月ぐらいから書いていたので、『VIVANT』(2023年7月期)で考察が盛り上がる前に全体構成ができていました。

“殺人犯を無罪にする”ってただごとじゃないじゃないですか。そこには何か理由がほしいなと思っていて。それを成立させるためには、何かを持っている人間でなくてはいけないとなっていった中で、いろいろストーリーを組み立てていくと、それぞれのキャラクターがいろんな側面を持っているという形になったというか。そこが考察っぽい、伏線っぽいシーンがたくさんある題材になったかなとは思います。

最近の視聴者の方々の傾向として、とてもしっかりと見てくださる分、甘いところがあると、すぐに見放されてしまう、と思っていて。なので、緻密でしっかりとしたストーリーを届けたいなという思いで作っています。

◆ドラマのストーリーの中にはセンシティブな内容もありますが、脚本はどのように作っていったのでしょうか?

脚本家と一緒に打ち合わせをしながら、なるべくフルスイングで作っています。「制作側がちょっと日和ると、“最後はいい人になるんだよね”“結局はヒーローなんだよね”ってなりがちだよね」と話していて、そういうところでストップするのはやめようと。割と行き切ったものを作っています。それを世に出す上で、TBSの審査部や考査部の方々に表現や描写について意見をもらっています。…実際見て、そんなにヤバい感じですかね?(苦笑) メイキングのインタビューとかで、俳優の皆さんが「すごく攻めてるな」っておっしゃっていて…。

でも、今の時代に伝えるべきことを伝えるためには、この世に蔓延っている“毒”というか。その“毒”の部分をしっかり描かないことには、ストーリーがちゃんと伝わらないと思うんです。そこをおろそかにすることで何倍にもなって跳ね返ってきて、キャストや制作陣も傷ついてしまうということは絶対に避けたかったので。その中途半端さというのが命取りになるかなと思って、そこはしっかり描くことにしています。

◆作品のテーマとして“犯罪者は、罪を償っても更生できないのか・許されないのか”というところがあると思います。これにはどんな意図があって、テーマに選んだのでしょうか?

悪い印象がついたとしても、謝ったら許してもらえる。法律上、釈放されたら許してもらえる…っていうことじゃないのが世の中だと持っていて。例えば会社の上司がパワハラしたとして、その人がどんなに謝っても、反省しても、ずっとそういう目で見られてしまう。だけど子供に善悪を教えるときには、「悪いことをしたら謝りなさい」って言うじゃないですか。

テレビドラマで大衆に向けて発信する上でも、過ちを犯したらちゃんと謝って更生して償うのが最善の策で。“そうしたら見てる人は見ててくれるよ”っていう感じじゃないですか。でも実際に人間って、そんなに簡単じゃなくて。見てる人は見ててくれても、今度はその人が潰される世の中だと思うんですよね。その矛盾に目をつぶっているなと思うところがあって、そういったところに目を背けずしっかりと伝えていきたいなと。

そういう世の中だからこそ、主人公は“殺人犯”というレッテルを貼らせないために動いている。“殺人犯”だと認められてしまったら、今の世の中では絶対に立ち直れないから。そこがこのドラマのメッセージかなと思っています。この強いメッセージを全話かけて伝えたいからこそ、1話の冒頭のシーンはあえて強いせりふから入っています。

長谷川博己『アンチヒーロー』©TBS

◆このテーマを選んだ具体的なきっかけやヒントになった出来事はありますか?

個人的なことですが、2018年に父が亡くなったんです。実家から車で45分くらいの病院の集中治療室みたいなところに入っていて、1週間ほどで亡くなってしまったのですが。その間、夜は病院に泊まり何事もなければ朝実家に帰り、そこから会社に通う生活をしていました。病院からは「何かあったら電話します」と言われていて。ある朝、実家にいるときに「容体が悪化していてあと数時間かもしれません」って連絡があって、車で向かうじゃないですか。その時にスピード違反で捕まったんですよ。

確か農道の40キロ道路で、「もしかしたら死に際に立ち会えないかもしれない」「これが最後かもしれない」「会いたい」という思いが先立って、スピード超過は絶対にいけないと分かっていつつも、オーバーしてしまって。今いろいろ書いて手続きしている暇なんかない。父の死に目に会えないかもしれないから、僕は振り払ってでも行きたいと思ったんです。でも、それが“世の中のルール”で。そんな僕を外から見たときに、視聴者だとしたらどう思うだろう、と。

それともう一つ。都内の道で左折した、その死角に白バイがいて捕まった車がいたんです。ギリギリ赤信号になったか何かで停められるんですけど、取り締まるんだとしたら、もっと見えるところにいて「見てるぞ」ってやったほうがいいじゃないですか。もし見えるところにいたら、スピードを出している車も減速して、事故の可能性を減らせるし。それって本当に善なんだろうか? とずっとモヤモヤしている中で、コロナ禍になって。それで“マスク警察”みたいなこととか、病気になった人が感染したことで責められるような騒ぎが続いて。

人の行き過ぎた善みたいなものを感じていたときに、もしも善を行おうとしない主人公がいたら…? と思ったんです。一見“悪”に見えるけど、それが何かを変えるきっかけになる悪だったら賞賛されるんじゃないか。それは善になりうるんじゃないかと。僕はこの世で一番悪いことは人を殺すことだと思っていて。その一番悪いことを許す、救う、なかったことにする主人公を描けたら、何かを伝えられるんじゃないかということがきっかけです。

◆最後に、視聴者の方にメッセージをお願いします。

とにかく、2話まで見てください(笑)。まず1話を見てください、というのもあるんですけど。何かを伝えたい、感じてほしいというよりは、とにかく楽しんでいただきたいです。長谷川博己さん演じるこの主人公を、僕らはいかに視聴者の方にドキドキワクワク、ハラハラしてもらえる主人公にできるかっていうのを全身全霊で取り組んでいるので。そこで何か二次的要素として感じることがあればうれしいなというぐらいで、とにかく長谷川さん演じる主人公を見てほしいです。

左から)長谷川博己、北村匠海『アンチヒーロー』©TBS

番組情報

日曜劇場『アンチヒーロー』
TBS系
2024年4月14日(日)スタート
毎週日曜 午後9時~9時54分

<配信>
◆Netflix 世界配信
日本国内では2024年4月15日(月)より配信開始
その後、海外にて順次配信を予定

◆U-NEXT Paraviコーナー
各話初回放送直後配信(第1話は2024年4月14日)

◆TVer・TBS FREE
各話初回放送終了直後から最新話を無料配信

<キャスト>
長谷川博己、北村匠海、堀田真由、大島優子、木村佳乃、野村萬斎 ほか

<スタッフ>
プロデューサー:飯田和孝、大形美佑葵
演出:田中健太、宮崎陽平、嶋田広野
脚本:山本奈奈、李正美、宮本勇人、福田哲平

番組公式サイト:https://www.tbs.co.jp/antihero_tbs/
番組公式X(旧Twitter)&Instagram:@antihero_tbs

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