「船内恋愛NG」がXで大バズり 神戸の海運会社社長が話す“禁止”の3つのワケ 発覚したら「2人とも強制下船」

※画像は「東幸海運」の公式X『@tokokaiun』より

車を動かすのに必要なガソリンに、冬場の寒さをしのぐために不可欠な灯油。私たちの日々の暮らしを支える原料となっているのは石油だ。この重要資源を船内の大型タンクへと積み込んで海洋を駆け抜け、港から港へと運ぶのはタンカー船である。そんなタンカー事業を戦後間もない1951年から手掛けているのは、港町・兵庫県神戸市に本社を置く東幸海運株式会社。現在、X(旧ツイッター)上では同社が投稿した内容が話題を呼んでいる。

「東幸海運の公式Xが船内恋愛に関する投稿をしたんです。すると話題を呼び、870万閲覧、3200リポストを記録しました」(WEBライター)

実際の投稿は、

《船内恋愛ってどうなんですか?というご質問。当社では社内恋愛はOKですが船内恋愛はNGです。付き合うことになったら会社に連絡するルール。以後は別々の船に乗船する事になります。その場合は長期休暇のタイミングは一緒になるように調整します。男女でドアの閉まった部屋に入ると強制下船になります。》

というもの。

ふだん垣間見ることがない船員さんの日常生活が知れたとあってか、X上では大注目され、この投稿の返信欄には、

《なんで同じ船に恋人いたらダメなんですか?》
《船内恋愛はロマンチックで楽しそうですが、会社のルールによると厳しい制約があるんですね》

といった疑問や驚きの声が並んだ。

そこで弊サイトは、Xへと当該ポストを投稿した東幸海運を直撃。すると、投稿者であり、同社4代目社長である笹木重雄さんが取材に応じてくれた。

笹木社長によると、

「船の仕事は力仕事がメインとあって、もともと女性の船乗りさんはいませんでした。ところが、技術革新の影響からタンカー船もコンピューター制御が基本になった。そこで2000年以来、弊社でも女性の船乗りさんの採用を始めたのです」(笹木社長)

とのこと。

■船内恋愛禁止のワケを社長が激白

しかし、力仕事がメインとなる船上は男社会。男性ばかりの職場に女性が入ってくるとあって「さまざまな問題が生まれるのでは」と危惧する声も船員からはあがったという。

「そこで、社内ルールを決める必要が出てきました。当社では船員さんは3か月ほど船へと乗り、1か月休むというルーティンで働いていただいています。当然、結婚をして家庭を持っている船員さんは乗船期間中、子どもや奥さんに会えない。皆がつらい思いをして頑張っているのに、船内恋愛をしている2人だけが毎日会えるのはいかがなものか、となり、このようなルールが設けられました」(前出の笹木社長)

また、船乗りさんにとって乗船期間中の船内は、プライベート空間であるのと同時に職場でもある。公私の線引きをしっかりして欲しいとの思いもルールを定めた背景にはあるという。

「このルールには女性船員をセクハラから守るため、という意識もあります。狭い船内である以上、秩序は守らないといけません。恋人関係が発覚した際には、2人とも強制下船となります」(前同)

今まで強制下船となった従業員はいるのだろうか。

「いますよ。2〜3年に1組ほどいます。船長から私に連絡が入り、“申し訳ないですが、ルールなので”と話がされて、恋人関係になった2人が下船したことを知ることがほとんどです。中には、船が出港してから2人が恋愛関係へと発展してしまい、その旨の申告を船員から直接受けることもあります。この場合も2人は強制下船となります」(同)

■船内恋愛が周囲にバレる理由

そうは言っても男女の仲は2人だけのもの。2人が恋心を胸の内だけに留めておけば、周囲に恋愛関係が発覚することはないようにも思うのだが……。その点を前出の笹木社長に尋ねると、意外な答えが返ってきた。

「船員さんは3か月ほど娯楽がほとんどない船内で共に過ごす。そのため、人間観察力が高まるみたいです。視線が泳いでいたとか、どことなく上の空だ、といったことから、船内恋愛は周囲にバレるのが常ですね(笑)」

しかし、社内恋愛をしている旨を会社に報告するのは、なかなかハードルが高いようにも思われる。自身のプライベートを会社へと伝えることを船員たちはどのように捉えているのか。

「弊社の場合、社内恋愛が発覚した際には、2人の休みをあわせるようにしています。乗船後は1か月休みがありますし、2人で海外旅行にも行きやすい。交際報告を会社へとした2人は結婚するパターンがほとんどです。他の職場とは異なる勤務体系ということもありますが、制度自体は船員に受け入れられているのかなと思っています」

「船内恋愛はNG」という言葉には大きなインパクトがあって広く拡散されたが、その背景には社員の平等性を守ることと、職場での公私の一線を引くため、そして女性社員をセクハラから守るためいう同社の明確な考えがあった。

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