夏に「欧州移籍」する選手、欧州帰りベテラン「爆発」と「貢献」【J1リーグ2024年シーズン「波乱の序盤戦」ウラ事情】大激論(6)

夏に欧州へ旅立つ選手はいるのか(写真は松木玖生らFC東京)。 撮影/渡辺航滋(Sony α1使用)

2024年のJ1リーグが開幕して、1か月半が過ぎた。毎年、予想外の展開となるJリーグは、今季もJ1初昇格のFC町田ゼルビアが首位に立つなど、いくつものサプライズを提供している。驚きにはネガティブなものもあるが、それもまた課題や問題を解決することで、今後のチーム上昇へのヒントとなるだろう。第7節までの発見、そして今後の展望を、ベテランジャーナリストの大住良之と後藤健生が語り明かす!

■リーグ、チームを「活性化させる」U-20世代

――現時点のJ1では、今後が分からないチームが多いということでしょうか。

後藤「Jリーグには、先行きを読めるチームはあまりない感じだね。広島の力が安定しているのは間違いないけど」

大住「今季の序盤はU-23日本代表の選手が活躍して、リーグをフレッシュにしてくれた印象がある。これからパリ五輪予選、そして本大会と不在の時期が出てきそうなわけだけど、そうなったら今度は、さらに若いU-20世代の選手などに出てきてほしいよね」

後藤「U-23代表に入っているけど、高井幸大はまだ19歳だしね」

大住「荒木遼太郎と松木玖生が代表に行った後、もう一度、ディエゴ・オリヴェイラに頼らなくてもいいわけじゃない。サガン鳥栖だって、ユースは毎年、力のある選手を輩出しているんだから、今のうちから3~4人出してみたっていいじゃない。鹿島アントラーズだってそうだよね」

後藤「来年のトップ昇格が決まった徳田誉は早く見てみたいね」

大住「まだまだ未熟な部分は当然あるだろうけど、できる選手はいるはずなんだよね。伸びる選手がいないと、チームは伸びない。それに、そういう選手が出てくることで、リーグ自体も活性化する。FC東京の荒木と松木が良い例じゃない」

■川崎で「好機到来」の由井、神戸で「花開いた」宮代

後藤「松木は一時期、伸び悩んでいる感じがしたけど、ここに来て急にまた存在感を強めてきたもんね。あとは、いつヨーロッパに連れていかれるかが心配だよ。夏過ぎにはいなくなっちゃうのかなという選手がいっぱいいる」

大住「そうしたら、また新しい選手が出てくればいいわけだから。ユース世代の選手にも、どんどん入ってきてほしいよ」

後藤「川崎フロンターレは守備に問題があるから、今年ユースから昇格した由井航太にもチャンスはある。由井は中盤もできるよ」

大住「川崎のアカデミーで育って、トップチームでは活躍できずにレンタルが続いていたけど、宮代大聖はヴィッセル神戸で良くなったね。移籍する良さって、あるよね。サンフレッチェ広島もU-23より少し上の年代だけど、川村拓夢とか満田誠は今季すごく伸びているよね。だから、チーム全体が活性化した」

後藤「満田はいろいろなポジションができるしね」

■大迫、山口、武藤、酒井が持ち帰った力で「優勝」

――若手が今シーズンの鍵でしょうか。

大住「若くて才能ある選手が伸びて、Jリーグの中心的選手になってきたら、もっと面白いリーグになるよね」

後藤「オリンピックの後には、何人かヨーロッパに行っちゃうかもしれない。そうなったら大迫勇也や酒井宏樹といったベテランが爆発してもいい」

大住「ヨーロッパに行く選手は多いけど、そこにずっといなくてもいいんじゃないのかな、という例もけっこうあるんだよね。たとえばベルギーであまり試合に出られないようなら、帰ってきてJリーグで活躍すればいい」

後藤「イングランドやスペイン、ドイツで活躍しているなら、そのまま頑張ってほしいけど、いつまでもベルギーでくすぶっているなら帰ってきてほしいよね」

大住「僕の案では、ベルギーにいるのは3年まで。その間にドイツなどに行けなければ、帰ってきたほうがいい。若い選手が呼ばれてヨーロッパに行くのは構わないけど、もっと行き来があってもいいと思う」

後藤「京都サンガF.C.では、帰ってきた原大智が、これまでにない貢献の仕方を見せていたよ。背が高いからトップに置きたいところだけど、トップ下に入って足元の技術を活かすプレーを見せていた」

大住「彼は懐が深いから、なかなかボールを取られないんだよね」

後藤「そうやって新たな魅力に目をつけられたら、またヨーロッパに行けばいい。今は、Jリーグで活躍すれば、ちゃんとヨーロッパの人たちも見ていてくれる時代なんだから」

大住「シーズン制が変わったら、そういう動きがスムーズになるかもしれないよ。ヨーロッパに移籍して、期限付き移籍でJリーグでプレーするとか。そしてまた、調子が上がったらヨーロッパに戻るとか。ヴィッセル神戸を見れば分かるように、ヨーロッパでの経験はJリーグでの勝負にプラスになるよね。大迫勇也や山口蛍、武藤嘉紀、酒井高徳といった選手たちが持ち帰った力が、優勝につながったわけだから。サラリーなどの違いはあるかもしれないけど、サッカー選手はプレーしてナンボ。活躍できるところに行くべきだよね」

後藤「岡崎慎司にもシントトロイデンで引退しないで、清水エスパルスに戻ってきて1年でもいいからプレーしてほしかったな。乾貴士がそうしているけど」

大住「乾は素晴らしい活躍をしているもんね」

© 株式会社双葉社