ウクライナ議会、兵士動員に関する改正法案を可決 兵力の増強狙う

ウクライナ最高会議(議会)は11日、兵士の動員に関する改正法案を賛成多数で可決した。ウクライナ東部ではロシア軍が前進を続けており、ウクライナは兵力の増強を狙っている。

数カ月におよぶ議論の末に可決された改正法案は、厳しいプレッシャーにさらされているウクライナ兵の数を増やすためのもの。

法案に当初盛り込まれていた、動員された兵士は3年後に動員を解除されるとの条項は、軍の要請により削除された。

ウォロディミル・ゼレンスキー大統領の署名を経て法案成立となる。

同大統領は今月初め、徴兵年齢を27歳から25歳に引き下げる法案に署名するなど、ほかの複数の措置を承認した。

改正法案は、徴兵手続きの厳格化と、徴兵を逃れようとした人に対する罰則の強化も含まれている。

オレクサンドル・フェディエンコ議員は、この法案は「我々には自分たちの領土を奪還する用意があり、武器を必要としているというメッセージをパートナー国に」発信するものだと述べたと、ロイター通信は報じた。

ロシアは兵力でウクライナを上回っており、ウクライナ軍はこのところ厳しい状況に置かれている。

ロイター通信によると、ウクライナのユリイ・ソドル統合軍司令官は法案可決前に議員らに対し、兵士の数でウクライナ軍はロシア軍に1対7から1対10で劣っていると説明。

「我々は最後の力を振り絞って防衛を維持している」、「この法を通過させれば、ウクライナ軍があなた方とウクライナ国民を失望させることはない」と話した。

法案に賛成した議員は283人で、野党議員49人は棄権した。

「動員解除」条項の除外に反発

棄権した議員の一人、オレクシイ・ゴンチャレンコ氏は、兵士が動員されてから3年後に動員を解除されるとの条項を除外した法案には賛成できないと述べた。

「兵役に就いている人や、動員される可能性のある人にとっての最大の疑問は、『自分はいつまで兵役に就くのか』だ。これを抜きにして、この法が動員状況を改善するとは思えない」とゴンチャレンコ氏は述べたと、英紙フィナンシャル・タイムズは伝えた。

国会の外では改正法案から動員解除の条項を除外したことに対する抗議行動が起きた。抗議者の多くには、軍務に就いている親族がいる。

「軍務に就いている男性も女性もとても疲弊している。彼らは2年間も戦い続けてきたのに、誰も彼らの交代を計画していない」と、ある人はロイター通信に語った。

「配置転換を実現するには、新兵がどれだけの時間(前線で)過ごさなければならないのかを知る必要がある」

「動員条件があやふやということは、永久に戦うことを意味する。厳密に定義された条件がなければ入隊する人は1人もいないだろう」

国会関係者によると、動員解除をめぐる問題については今後、別の法案で検討される。

兵役逃れを防ぐ厳しい措置も、法案の最終版から除外された。

法案の主な内容は次の通り。

インフラ施設に攻撃

法案可決の数時間前、ウクライナはロシア軍の激しい砲撃に見舞われた。

80発以上のミサイルとドローンが、11日未明にウクライナ各地の標的を狙った。その多くはエネルギー・インフラを狙ったもので、攻撃の3分の1近くがウクライナの防空網を突破した。

キーウ州を含む3地域における最大の電力供給源だったトリピッリャ火力発電所は完全に破壊された。

ウクライナは西側諸国に対し、さらなる弾薬や防空支援を要請している。

しかし、600億ドル規模のアメリカの軍事援助パッケージは、連邦議会下院で野党・共和党の反対を受けて数カ月にわたり棚上げされている。

(英語記事 Ukraine war: MPs pass long-awaited law to boost troop numbers

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