5年ぶりに帰ってきた“こんぴら歌舞伎” 令和の大改修のこけら落としを寿ぐ「祝幕」完成までの物語【香川】

讃岐の春の風物詩、四国こんぴら歌舞伎大芝居。香川県琴平町の金丸座には、令和の大改修のこけら落としを寿ぐ「祝幕」が飾られています。祝い事の際に支援者から贈られる、特別な「祝幕」。その完成までを追いました。

満開のサクラとともに5年ぶりに帰ってきた、こんぴら歌舞伎です。

「いらっしゃいませ」
開演前の舞台を彩るのが、特別な引幕「祝幕」です。飾られるのは2013以来のこと。その華やかさに、訪れた誰もが目を奪われます。これもまた、歌舞伎の醍醐味です。

古くから「さぬきのこんぴらさん」として親しまれ、多くの参拝者で賑わった琴平の町。こんぴら詣での楽しみのひとつが、芝居見物だったといいます。その歴史と文化を今に伝えるのが、金丸座です。日本最古の芝居小屋で、これからも安心して歌舞伎が楽しめるようにと、2億円以上をかけた耐震工事がおととし完了。コロナ禍を経てようやく迎えたこけら落としを寿ぐのが、今回の「祝幕」です。

贈ったのは大手食品メーカー、永谷園です。日本の伝統文化を守ろうと、さまざまな取り組みを行っています。

(永谷園ホールディングス 永谷栄一郎会長)
「私ども歌舞伎とは非常に縁があって、東京の歌舞伎座、演舞場に緞帳を何回かかけさせていただいた訳ですけど、その時の一番最初の緞帳の図柄をここに緞帳掛ける訳にいかないんで、祝幕としてデザインしなおしまして、寄贈させていただきました」

「5千と5千635」

(永谷園ホールディングス 濱田祥男さん)
「祝幕をつけるんで、それの打ち合わせ、それと寸法ちゃんと取っとかないと」

去年(2023年)12月。金丸座復活にむけた準備がすでに始まっていました。巨大な祝幕の寸法をはかる作業です。天井まで上ったり、レーザーポインターを使ったり。とても大がかりなものでした。

(四国こんぴら歌舞伎大芝居 高畠豊事務局長)
「日本最古の芝居小屋、そういったところには、やっぱりそれに似あう格式のあるものを設置しないと、この小屋は活きません」

(永谷園ホールディングス 濱田祥男さん)
「今の劇場は緞帳、機械で吊るし上げますから、ところが、昔の小屋それをできないですから、このままではお祝いの雰囲気出ないんで、祝幕をつければこけら落としの雰囲気が出る」

「じゃあ11番から確認をいたします」
この日、京都の老舗織物メーカーを訪ねると、11枚の布が。すべてを並べ仕上がり具合を細かく確認していました。これを縫い合わせて、祝幕にするのです。

(川島織物セルコン 森本直樹さん)
「いやあ、忠実に表現されていると赤の色がどう出るかというのが気にはなってたんだけども、きれいにこう出てますね」

日本画の巨匠、故・松尾敏男さんによる「富貴花苑」。紅白のボタンが鮮やかです。永谷園が1988年に東京の歌舞伎座に初めて寄贈した緞帳も「富貴花苑」でした。

(川島織物セルコン 森本直樹さん)
「華やかなボタンのデザインですのでね、華やかな春の訪れを感じさせるような幕になってくれればなと思っております。楽しみですね」

先月29日。準備が大詰めの金丸座に、完成した祝幕が届けられました。8人がかりで、慎重に取り付けます。そして1時間半後、高さ約6メートル幅約15メートルにもなる巨大な幕がその全貌を見せました。こんぴら歌舞伎復活を祝うのにふさわしい美しさです。

(永谷園ホールディングス 永谷栄一郎会長)
「とてもきれいなものができたと思っております。いいご縁をいただいてお手伝いさせていただいた訳ですけど、いい小屋ですね。芝居小屋やっぱりこんなところは本当にないなと思いますよ。大事に使って、芝居を何回も何回もここでやっていただきたいなと思いますね」

歌舞伎文化の伝統を支えたい、そんな思いが込められた祝幕です。21日の千秋楽まで、金丸座を華やかに彩ります。こんぴら歌舞伎に足を運ぶ方はぜひ祝幕にも注目してください。公演は21日までです。

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