創業38年の人気ハンバーガー店、車いすユーザーから訴訟を起こされ廃業へ

米カリフォルニア州サンフランシスコで長年愛されてきたハンバーガーショップが廃業を余儀なくされた。Daily Mailなどが報じている。

ジョージ・コリアヴァスさんとヘレンさん夫妻が営む「Great American Hamburger & Pie Co.」は今年1月、車いすユーザーの男性から訴えられた。訴状によると、男性は2023年10月に店を訪れた際、入り口の段差が高すぎるために店に入れなかったという。その2カ月後も同じように入店できなかったため、アクセシビリティの専門家に店の調査を依頼した。

その結果、入り口にはスロープが備わっておらず、店内の通路も車いすが通るには狭すぎたため、男性は「障害を持つアメリカ人法(ADA)」を遵守することを求めて店と大家に対し訴訟を起こした。

大家はバリアフリー化を検討したが、コストがかかりすぎるため断念。コリアヴァスさん夫妻は新型コロナウイルスのパンデミックの影響で膨れあがった負債に加え、人件費や原材料費の高騰などで苦しい経営を強いられていたが、この訴訟が決定打となり閉店することを決意したという。弁護士費用も到底払えそうになかったそうだ。

ジョージさんは「ストレスが重なって『もういいや、全部忘れてしまおう』というところまで来てしまった。大家は何もしてくれず、結局は俺たちみたいな中小企業が割を食うんだ」とSFGateに語った。

Great American Hamburger & Pie Co.はヘレンさんの両親が1986年に創業。2010年にジョージさん夫妻が店を受け継ぎ、ハンバーガーとフライドポテトの味は市民から愛されてきた。子どもの頃から通っていた客が、自分の子どもを連れて店を訪れるというケースも少なくなかったそうだ。ジョージさんは、SFGateの取材に対してこう続けた。

「このコミュニティと素敵なお客さんと別れるのが辛いよ。朝、週に1、2度来てくれて、一緒に座って話をする紳士がいるんだ。閉店することを知らせたら、今週は毎日来てくれてるよ。こういうことがこれからもずっと心に残り続けるんだろうな」

Great American Hamburger & Pie Co.は米国時間11日に最後の営業を終えた。

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