超個人的な意見だが、川サウナと街の施設サウナはまったく別物だと思っている。テントサウナのプライベート感、自然の中の開放感、木漏れ日、心地よい風、四季折々の幸福感は川サウナならではのものだ。
でも、そんな僕も思わず通ってしまう街の施設サウナがいくつかある。今回は僕のフィールドでもある東海エリアにあるオススメの施設サウナを、「火、水、木、草」の4つのテーマに分けてご紹介したいと思う。
■火の章/岐阜県高山市『湯屋 鷹の湯』
僕が施設サウナを苦手とする理由のひとつとして、ほとんどの施設の熱源が電気やガスだからというのがある。メンテのしやすさから致し方ないことだが、電気やガスは薪ストーブに比べて熱の肌あたりが強くてあまり好きではない。なにより、炎による癒し効果もないから、いわゆる“味わい深さ”も欠けてしまうのだ。
そんななか、施設なのに手のかかる薪ストーブサウナを提供している銭湯がある。飛騨高山にある『湯屋 鷹の湯』だ。
使用している薪ストーブは、無骨な外観と熱効率の良さでファンも多いMOKI製のもの。
最初の火入れはしてくれるが、基本的に薪をくべるのはお客自身だ。常連さんが慣れた手つきで薪をくべてくれたり、見よう見まねで自分で入れる行為も楽しく、お客さん同士の交流も生まれやすい。もちろんセルフロウリュも可能。ベンチからストーブの窓が見やすい配置で、テレビなどもないからじっくり炎のゆらめきに集中できるのもいい。
施設としては貴重で贅沢な薪ストーブなのに、お値段たったの750円というのも銭湯価格で嬉しい。館内も銭湯らしい雰囲気がなんとも味わい深く、フィンランドの公衆サウナもこんな感じかなあと思わせてくれる。個人的にはかなり好きな銭湯である。
■水の章/静岡県静岡市『サウナしきじ』
サウナにとって水風呂の水質は非常に重要だ。個人的には「硬度高め・ミネラル成分豊富・伏流水で安定した温度」を満たしているものがいい水風呂の条件だと思っている。
しかし、天然水と謳う施設は多くても、その水質はバラバラで、ほとんどが軟水のものばかり。その点、ここの水風呂は地下でじっくりと濾された硬度84の中硬水で、地質から溶け出したミネラルの量がとにかくすごい。入ればわかるが、肌あたりが柔らかく、他の施設のような肌を刺すような嫌な感じが一切ないのだ。
サウナ自体も、フィンランド式はもちろん、熱すぎて3分と入っていられない薬草サウナもある。水も最高なんだが、ここは薬草サウナや薬草風呂などが充実してるのもありがたい(質もいい)。デメリットとしては、人気施設なゆえに休日の混みっぷりが半端ないってことくらいだ。行くならいっそ会社なんて休んで、平日にじっくりと堪能すべし。
■木の章/岐阜県八百津町『ヤオツサウナ&スパイス』
サウナは自然との接点を楽しむものだと思っている。サウナ小屋の木の温もりや薪ストーブの炎のゆらめき、心地よい外気の風と鳥の鳴き声。それらが相まって、真の癒しと“ととのい(調い)”が得られる。
それらが楽しめるアウトドアサウナで、本格的なログサウナがあるもっとも有名な施設といえば長野県にある『The Sauna』だが、そのログサウナと同等の質を再現しつつ、地元の「東濃ひのき」にてログサウナを作って提供しているのが『ヤオツサウナ&スパイス』である。
山に囲まれた施設内に東濃ひのきのログサウナがあり、周囲にはヒノキチップが敷き詰められ、常に木の香りが漂う。
小屋の中はMOKIの大型ストーブがセンターに鎮座し、8人が対面で座れる上段のスペースからは常に炎を眺めることができる。暗さもちょうど良く、こういう状況だと仲間との話も弾んで長く入っていられる(=ととのう確率も上がる)。座る位置で熱さやロウリュした時の蒸気の巡り方が違うのも面白い。
沢から引いた水風呂はキンキンに冷えており、山を眺めながらの外気浴もひたすら心地いい。時間も3時間あってゆっくりでき、サウナ後に店名の通り特製のスパイスカレーをいただく。オーナーのゆるい雰囲気も心地よく、“友達んちのサウナ”って感じが、また行きたくなる要素にもなっている。
■草の章/岐阜県大垣市『田辺温熱保養所』
水の都・大垣市にて、知る人ぞ知る存在としてオンリーワンの地位を築いている『田辺温熱保養所』。
その特徴はなんといっても、「樽」による薬草蒸し風呂だ。江戸期に大垣藩医の江馬蘭斎が考案した蒸気風呂をベースに開発されたもので、薬草を煮立たせて発生した蒸気を樽の中に満たし、その蒸気熱で体を温める。温度自体は65℃近辺で低いと思われがちだが、湿度がほぼ100%なので蒸気熱でそんなに長く入っていられない。
使用されている薬草は、薬草の宝庫と呼ばれる伊吹山麓で採取された薬草と、自家製の無農薬栽培で育てた貴重な薬草のみを使用し、十数種類を調合して煮立てている。その効能は折り紙付きで、遠方からプロのアスリートなども疲れや傷を癒しに多く訪れる。
蒸し風呂から出ると椅子に座って風に当たって休憩し(水風呂はない)、また樽に入るを3、4回繰り返す。その後は畳の部屋に寝転がって大休憩をし、再び樽に入るを繰り返す。
わずか2000円で5時間いられるので、本当にゆっくり過ごすことができる。受付にいるご夫婦が本当に気さくで、それもまたひとつの癒し効果あり。
何気に僕は近所ということもあり、足繁く通っては薬草に蒸されている。
■おすすめサウナのまとめ
東海エリアには様々な施設サウナがあるが、上記のように個性的な施設が多い。紹介した以外にも、田辺温熱保養所と同じ水の都・大垣市にある『大垣サウナ』の水風呂や、薬草とハーブにこだわりまくっている岐阜県各務原市の『恵みの湯』なんかもアツい施設だ。会員制ではあるが、静岡県裾野市の『サーマルクライムスタジオ富士』は、現状の日本のサウナ施設の中では、質もスタイル(サウナの入り方含め)もNo.1だと思っている。
それぞれ自分の好みに合ったサウナ施設に出会えることは、本当に幸せなことだ。それを探しに行く「サ旅」も、じつに楽しい旅のスタイル。ぜひ、あなたも旅に出て、マイベストなサウナを探してみるといいだろう。
でも、意外と一番いいサウナって、日常的に通える一番ご近所のサウナだったりするけどね。