鳥取県初の夜間中学が開校 学ぶ喜びかみしめ10人入学 「チャンスを無駄にしない」

新入生を代表してあいさつする田中ひとみさん=鳥取市湖山町北5丁目、鳥取県教育センター

 鳥取県初の夜間中学、県立まなびの森学園が12日、鳥取市湖山町北5丁目に開校した。公立では山陰両県初で、さまざまな事情で十分に教育を受けられなかった中学既卒者などを受け入れる。初年度は10~60代の10人が入学し、学ぶ喜びをかみしめた。

 県教育センターの情報教育棟を改修して設けた。3年制で、平日の午後5時半から8時45分まで授業を行い中学の9教科が学べる。県在住の15歳以上で、不登校や病気などで十分に教育を受けられないまま中学を卒業した人、小中学校の教育を十分に受けられなかった外国籍の人などが対象。

 開校式で、山口京子校長は「学びたいという願いを持つ一人一人の強い思いに応える」と述べた。

 新入生の田中ひとみさん(63)は1歳になる前に母が亡くなるなど家庭の事情で小学校は転校を繰り返して新しい環境になじめずいじめを受け、中学では不登校になった。子どもや孫に「宿題を見て」と言われても教えられず夜間中学の存在を知ってからは「鳥取にできたら通いたい」と待ち望んでいたという。

 入学式の新入生代表あいさつで「仲間と学び、過去のトラウマを克服したい。学びのチャンスを無駄にしないよう頑張る」と誓った。

 夜間中学はもともと戦後の混乱期に義務教育を受けられなかった人のために都会地を中心に誕生。近年、不登校などで十分に教育を受けられなかった既卒者らの受け皿として見直され、国が各都道府県に少なくとも1校の公設を促している。

 島根県内には公設がなく、大田市に2023年11月、私設が誕生している。

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