春日部『みどりスーパー』~名物はあの「そこらへんの草」!? の埼玉偏愛スーパー~

映画『翔んで埼玉』で一躍有名になった、「そこらへんの草」を販売するスーパーが春日部にある? そう、春日部といえば、あの男の子で知られる町。埼玉愛がたっぷり詰まった、個性派パンも見逃せませんよ~。かなりクセ、強めです。

今回のゴー!ゴー!

『みどりスーパー 』(埼玉県春日部市)

「春日部のイメージは“しんちゃん”しかない」とは、漫画を原作に映画化された『翔んで埼玉』(原作:魔夜峰央〈まやみねお〉)の劇中、結婚して東京に住みたい女性の地元・春日部へのディスり。物語は東京都民にひどい差別を受ける、埼玉県民の愛と正義のファンタジーです。

一方、現実の春日部で、昭和47年(1972)創業の食品スーパーが「みどりスーパー」。両親が開業した店を8人きょうだいの年長者3人で引き継いでいます。

長女で惣菜・広報担当の河内(かわうち)みどりさんが、衝撃を受けたのは2019年。地元パン店の廃業により、ソウルフード「プリンパン」が消滅。そこで「地元の卵を使った春日部ぷりんを作っている自分たちで、別の形で再現できないか」と挑み作ったのが、「春日部ぷりんパン」でした。個性派オリジナル総菜路線のきっかけです。現在は、もう一つの人気パン「春日部プリプリケツぷりんパン」も大ヒット。しかし、本当の転機はこれからでした。

以前から、エイプリルフールに大企業がツイートするネタに注目していたみどりさん。「うちでも何かできないか」と考えていたとき、魂に刺さった言葉が『翔んで埼玉』の名台詞、「埼玉県人には、そこらへんの草でも食わせておけ!」でした。医師の診察を懇願する埼玉県民に、エリート都民の主人公がムチ打つひと言。そして、運命の歯車はみどりさんに味方します。

「3月31日に、そこらへん(近所)のおじさんがそこらへんの草(アシタバ)を持ってきてくれた」。天ぷらにし「そこらへんの草天」として4月1日にツイートしたことで、初バズり。その後、地元の商店も巻き込んで「そこらへんの草」商品を各店で開発・販売。スタンプラリーを実施すると、コロナ禍の町歩きにちょうどいいと、県内外の新しい春日部ファンが増えました。この店の「そこらへんの草の根活動」は今、海外の観光客を乗せたバスが寄るなど、世界も注目しているのです。

名物「そこらへんの草天丼」。この日の草はアシタバが中心。
惣菜・広報担当の河内みどりさん(長女)。映画『翔んで埼玉』で県民団結の証・埼玉ポーズ!

みどりスーパー発、圧巻の個性派パン

『翔んで埼玉』だけでなく、春日部といえば、あのおしりプリプリな男の子で知られる町。そんな埼玉愛を形にした個性的なパン、実はまじめな食品業界の賞も獲得している実力派です。

「春日部ぷりんパン」は春日部市民の味だった「まつばのプリンパン」へのオマージュ商品。「ファベックス 惣菜・べんとうグランプリ2022」で金賞を受賞した。
ほうれん草で罪悪感ゼロを目指した「そこらへんの草ゲティナポリパン」と「そこらへんの草ロニサラダパン」。
「春日部ぷりんパン」と似て非なる、おしりとあんこの危険な出会い「春日部プリプリケツぷりんパン」。
映画『翔んで埼玉』の地下神殿(ロケ地:春日部市)を表現した「地下神殿クリームパン」。

お土産にもぴったりのご当地定番商品

地元の名産品に「そこらへんの草」のラベルを貼って売る、この店の埼玉啓蒙の草の根運動。地域を巻き込み、賛同を得て、埼玉道を突き進みます。

埼玉のド定番、草加せんべいがやっぱりおすすめ。太田屋米菓「春日部 大丸せんべい」や「一口あられ」は地元人気が高い。
春日部産の無添加ハチミツを製造する養蜂家・田中麻美さんの「Kasuka Bee(カスカ ビー)」。正真正銘、春日部のそこらへんの草花の恵みというハチミツ。
「『Kasuka Bee』は、本当に春日部の花の香りがして感動です! 」と、マネージャー の太田良子(よしこ)さん (次女)。
地元のおかき専門店・イシハラヤの「そこらへんの草おかき」。食べてびっくり、ワインに合うそこらへんの草、バジルが香るおつまみ系おかき。
麦糀使用のご飯のとも、金杉糀屋謹製のおかずみそ「おなめ」は、ここでは「そこらへんの草おなめ」。「マヨネーズと混ぜ、そこらへんの草(野菜)をディップするとおいしい」と、みどりさん。

この棚に注目!

「みどりスーパー」と書かれた凧は、開店祝いに贈られる縁起物で、江戸川河川敷で5月に開かれる「春日部大凧あげ祭り」にちなみます。宝島社からの寄贈本『翔んで埼玉』、地元の子どもや芸術家からの寄贈品などを展示。まさに“ミュージアム”と呼ばれる棚です。

動画「ご当地スーパー朝・昼・バン!」はこちら!

『みどりスーパー』の詳細

みどりスーパー 住所:埼玉県春日部市米島1133-38
/営業時間:10:00~19:00
/定休日:日/アクセス:東武アーバンパークライン南桜井駅から徒歩10分

取材・文・撮影=菅原佳己
『旅の手帖』2023年7月号より

菅原佳己
スーパーマーケット研究家
執筆やテレビ出演、講演活動をこなしながら、全国のご当地スーパーを行脚。埋もれた日常食の発掘とその魅力を伝えている。著書に『47都道府県 日本全国地元食図鑑』(平凡社)など。

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