●ホテルが企画
能登半島地震後、2次避難先の富山市のホテルテトラリゾート立山国際で過ごしている珠洲市の被災者約40人が12日、立山町末三賀の常願寺川沿いの堤防で花見を行った。滞在期限を迎え、14日に引っ越す前に、ホテル従業員が思い出を作ってもらいたいと企画した。「元気が出た」「頑張って生きよう」。被災者は満開の桜を笑顔で眺め、富山で過ごした日々を胸に、それぞれの新生活へ歩み出すことを誓った。
12日はすっきりとした青空が広がる絶好の花見日和。被災者は正午ごろ、従業員の運転する車に乗り、ホテルから片道約20分の距離にある常願寺川の堤防に到着した。残雪の立山連峰を背景に、満開の桜並木が続く景観に見入った。桜の木のそばに敷いたブルーシートに腰を下ろし、従業員手作りのおにぎりを頬張り、会話を弾ませた。
●支配人「家族のよう」
松原和徳支配人が「皆さんと3カ月ほど一緒に過ごし、家族のように思っている。石川に戻っても元気で過ごしてください」とあいさつした。被災者は目頭をぬぐったり、何度もうなずいたりして聞いた。
堤防約1.9キロには、ソメイヨシノやコシノヒガンザクラなど379本が植えられており、被災者は桜並木の下を散策したり、記念写真を撮ったりしてのんびりと過ごした。
従業員の前田志津恵さん(49)が通勤途中に桜が満開になっているのに気付き、花見を提案した。被災者が離れ離れになる前に見てもらいたいと考えたとし、「体に気を付けて、ずっと笑顔でいてほしい」と願った。
「ホテルの皆さん、富山の皆さんには本当に良くしてもらった」。広山淑恵さん(81)は富山で過ごした日々を振り返って感謝した。自宅に戻るめどは立たず、白山市の避難先に向かうが「生活が落ち着いたら、必ずみんなでホテルに泊まりに行く」と語った。
花見の参加を仲間に呼び掛けた大兼政康秀さん(60)は「みんなが笑顔になって良かった。不安は尽きないが、明るい気持ちになれた」と前を向いた。
珠洲市の住民は、現在62人がホテルテトラリゾート立山国際に避難している。滞在期限は13日までで、50人が白山市や小松市の旅館などに移る。残る12人は自宅に戻ったり、親戚宅に移ったりする。