柏が見せた守備の“機能美”。エース細谷らの不在、「くそったれ」コールにも負けずに掴んだ浦和戦の大きな一勝

[J1第8節]柏 1-0 浦和/4月12日/三協フロンテア柏スタジアム

4月12日の金曜日に、柏と浦和のJ1・8節が行なわれ、ホームの柏が1-0で勝利。柏は途中出場のFW木下康介の2試合連続弾となるゴールで勝負を決めた。

4-3-3の布陣で大きく開いたウイングを生かす浦和の攻撃を、柏は4-4-2の3ラインを常にコンパクトに保ちながら一糸乱れずに左右にスライドする守備で対応していく。

現役時代“アジアの壁”と称された井原正巳監督が構築した組織的な守備は実に美しく、互いを支え合う献身性も見事であった。浦和のペア・マティアス・ヘグモ監督が「攻撃で少し苦しんだ試合。相手は非常にまとまったチームだったというのが、ひとつの大きな要素だったと思います」と振り返った言葉にも大きく頷ける。

さらに柏はパリ五輪アジア最終予選(U23アジアカップ)に臨むU-23日本代表に招集されたエースFW細谷真大、売り出し中の右SB関根大輝らを欠く状況でもあった。

それでも10番のマテウス・サヴィオは胸を張った。

「彼ら(細谷、関根)のポテンシャルはここで言う必要はないと思いますが、そこに変わって入った選手たち、(川口)尚紀らもそうですし、他の選手もいつ来るか分からない出場機会のために、普段からトレーニングをしてきているわけなので、ピッチに立つ11人だけがレイソルを象徴するのではなく、やはり一人ひとりがレイソルの一員である自覚を持ってトレーニングをしてきています。そういう意味では浦和を相手にしたこの一勝は、非常に価値のある勝利だと思います」

【動画】柏×浦和のハイライト

ポゼッション率は42パーセントと58パーセントで劣った柏だが、シュート数は14本と8本で上回ったように、効果的な攻撃も見せた。

特に頼りになるのがやはりM・サヴィオの閃きとテクニックで、決勝弾もこの10番のクロスから生まれている。

さらに前述のように細谷が数試合、不在になる予定の前線では「簡単に言うと自分のなかのポテンシャルを、大きな身体を使いこなせるようにしてもらったという形です。足先だけでなく全身でシュートを打てるようになりました」と、190センチの長身FW木下が、今季4点目となる2試合連続弾を決めるポジティブな話題も提供している。

なかなか勝ち切れなかったホーム・三協F柏ではこれが嬉しい今季初勝利。相手選手が倒れている状況で攻撃を続けた際に「柏、柏、くそったれ」のコールが浦和サポーターから飛んだが、そんな厳しい声も撥ね返した。

順位は暫定ながら5位に浮上(3勝4分1敗)。M・サヴィオの言葉通り、満員のスタジアムで掴んだこの一勝は、チームにとって大きいものになるに違いない。

取材・文●本田健介(サッカーダイジェスト編集部)

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